(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

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「規模の経済性」と「経験効果」(3)「密度の経済性」

前回は、「時間あたりの売上を増やす」ことで「時間あたりでかかる固定費(人件費や家賃)の比率を下げる」という「速度の経済性」の話をしました。

 

家賃や輸送費のように、空間の広さや距離に応じて発生する費用もあります。

そういう固定費に対して売上を増やす、つまり「空間あたりの売上を増やす」ことで生まれる規模の経済性を「密度の経済性」(economies of density)といいます。

 

コンビニなどのチェーン・ストアでは「ドミナント戦略」(dominant strategy)と呼ばれる出店戦略があります。

『すごい立地戦略』という本では、次のように書かれています。

 

    セブン‐イレブンは集中出店方式(ドミナント方式)に則って出店しています。お弁当などは「製造工場から3時間以内に店舗に届かなければならない」決まりなので、そのための工場建設、インフラ整備に時間がかかります。

   そして、工場やインフラが整ったタイミングで一気に数店舗を同時オープンさせます。この方法で出店を続けているので、今までまったくなかった地域に、ある日突然複数のセブン‐イレブンがオープンする、なんてことがあるのです。(*1)

 

地域ごとに工場やインフラの固定費がかかるので、ある地域に進出するときは同時に多くのお店を出し、固定費に対する売上を増やして採算をとるのです。

 

ヤマト運輸が始めた「宅急便」も、密度の経済性を考えたビジネス・モデルでした。

あるテレビ番組(*2)で、瀬戸薫会長(当時)は次のように語っています。

 

    すごく荷物が集まると、密度化すると。

    要は、単位面積あたりに配達する荷物がすごく増えてくる。

    ですから個人(を相手にする宅配)をやっても、ある一定以上の荷物が集まってくれば、必ず採算に乗る。

    これをやっぱり小倉は考えたんですね、計算したんです。

 

発言の中に出てくる「小倉」というのは、ヤマト運輸2代目の社長で、宅急便の生みの親であり、名著『経営学』(*3)を書いた小倉昌男さんです。

 

過密の問題があるとはいえ、都市部に多くの人が集まるのも、密度の経済性があるからでしょう。

たとえば「コンパクト・シティ」という構想があります。

「コンパクトな地域内に多くの人が住んで、中心部に学校、職場、病院、商業施設などを配置すれば、密度の経済性によって効率的で利便性の高い街づくりができる」という考え方です。

 

*1  榎本篤史著『すごい立地戦略  街は、ビジネスヒントの宝庫だった』(PHP研究所、2017年)、第2章

*2  テレビ東京カンブリア宮殿」2011 年10月20日

*3  小倉昌男著『経営学』(日経BP、1999年)

 

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