(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

経営学の紹介 & Coffee Break(写真、紀行、音楽など)

ヨーロッパ鉄道紀行(8) ヴェネツィア

 今週は連休で週末が早く来ましたが、Coffee Breakです。

 

ヴァポレットを降りて、ヴェネツィア本島を散策しました。

 

どことなく、それらしい雰囲気の「ためいき橋」。

牢獄へ送られる囚人が、ヴェネツィアに別れを告げる場所だったとか。

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Ponte dei Sospiri, Venezia, Italy

 

対岸の島にたたずむサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会。

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Basilica di San Giorgio Maggiore, Venezia, Italy

 

絢爛な壁画のサン・マルコ寺院

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Basilica di San Marco, Venezia, Italy

 

静かな路地裏の運河。

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Venezia, Italy

 

歩き疲れて、ホテルへ戻りました。

夕闇がせまる頃になって、ふたたび街へ出ました。

 

サンタ・ルチア駅の対岸に見えるサン・シメオン・ピッコロ教会。

夜のヴェネツィアも、なかなかいい雰囲気です。

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Chiesa di San Simeon Piccolo, Venezia, Italy

 

ヴァポレットで、運河を巡りました。

 

海辺の素敵なレストラン。

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Venezia, Italy

 

夜のジェズアーティ教会。

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Chiesa di Santa Maria del Rosario, Venezia, Italy

 

佐藤耕紀

『今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「経営学」』

(同文館出版、2021年)税込1870円

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価格はAIが決めている?: ダイナミック・プライシング、需要と供給

    今回も、著書のボツネタから。

    紙幅の関係で、泣く泣く削ったところが多々あります。

 ***** 

    「ダイナミック・プライシング」(dynamic pricing、変動価格制)という言葉をよく聞くようになりました。

    予約サイトで飛行機やホテルの料金をチェックすると、調べるタイミングによって、値段が変わっていることがあります。

    同じ飛行機で同じグレードの席に座っている人たちも、実は払っている料金が違っていることがあります。同じホテルで、同じグレードの部屋に泊まっている人たちにも言えることです。

    最近では、コンサートのチケット販売などで、売れ行きの現状と、過去の販売データを勘案して、「AI」(artificial intelligence、人工知能)が価格を決めていることもあります。

    家電量販店も、ネット販売の売れ行きに応じて、価格を変えていることがあります。

    アメリカでは、渋滞の状況に応じて、高速道路の料金を変動させているそうです[1]

    最近ではスポーツ観戦などで、人気に応じて、席ひとつひとつに違う価格を設定することも行われています。見やすい席、出入りしやすい席などは値段が高くなるようです。

    販売側は、すべての席の売れた順番を把握できます。早く売れる席ほど人気があるということなので、人気に応じて値段を変えることができるのです[2]

    売り手は、さまざまな要因を考慮して「価格」(price)を決めます。

    経済学の基本のひとつに「価格は需要と供給で決まる」というものがあります。「需要」(demand)というのは「(ある価格で)買い手が買いたい量」です。「供給」(supply)というのは「(ある価格で)売り手が売りたい量」です。

    「需要が増えたり、供給が減れば、価格は上がる」「需要が減ったり、供給が増えれば、価格は下がる」といえます。

    「価格が上がると、需要は減り、供給は増える」「価格が下がると、需要は増え、供給は減る」という言い方もできます。

    「豊作貧乏」「大漁貧乏」という言葉をご存知でしょうか。

    みなさんが農家だったら、豊作は喜ばしいことでしょう。しかし、あまりにも豊作だと、農作物の需要(買いたい量)よりも供給(売りたい量)が増えすぎて価格が下がり、かえって利益が少なくなることがあります。

    漁業でも、魚が獲れすぎると同じようなことが起こります。一定の需要に対して、供給が過剰になって、価格が下がるということです。

    「新型コロナウイルス」の影響で、2020年の4月ごろにはマスクの値段が高騰しました。需要に対して供給が足りなくなって、「マスクを買うためならもっと払ってもいい」という人がたくさん出てきたわけです。「高く売れるから値段を上げよう」という売り手も出てきて、値段が上がりました。

    ところで、価格をつり上げるのは悪徳業者だと言い切ってよいのかどうか、実は古くから議論があります。「供給に対して需要が多いときに価格が上がるのは当然で、そうした市場価格は資源配分を効率的にする」という考え方もあります。

    最近では、経済学者の大竹文雄先生が、次のように書いています。文中の「チケットストリート」というのは、チケットの転売業者です。

 

    チケット転売問題について、伝統的な経済学者の多くはチケットストリート社長の西山に賛成するだろう。なぜなら、チケット転売は、価値を生み出す正当な行為だからだ。チケットが高額であっても、売り買いする人は、その取引でどちらも便益を受けている。[3]

 

    ここで大竹先生は「交換」(exchange)の社会的な価値について言っています(交換については改めて9-4でお話しします)。ダフ屋の問題は複雑なので、興味のある方はこの本を読んでみてください。

    さて、「新型コロナウイルス」の影響で、マスクの価格は上がりましたが、原油の価格は下がりました。経済活動が停滞して、原油の需要が減ったためでしょう。

    このとき、原油WTIという原油先物)の価格がマイナスになるという史上初の珍しい現象が起きました。貯蔵できる量に限りがあるため、売り手がお金を払ってでも原油を引き取ってほしいということになったようです[4]

 

[1] 「ダイナミックプライシングって何?――AIで値付け臨機応変に」(日本経済新聞 夕刊、2020年3月16日)

[2] TBS「がっちりマンデー」2020年7月19日、https://gacchiri.tv/n/n5e880c50fa43

[3] 大竹文雄『競争社会の歩き方 自分の「強み」を見つけるには』(中央公論新社、2017年)、p.7

[4] 日本経済新聞NY原油 史上初のマイナス価格、先物に売り」2020年4月27日、https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58525420X20C20A4QM8000/

 

佐藤耕紀

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新聞の記事で紹介していただきました

本日の北海道新聞旭川版)朝刊で、紹介していただきました。

ありがとうございます。

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佐藤耕紀

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主要国でウーバーが使えないのは日本くらい?: 規制緩和

    今回も、著書のボツネタです。

    「ネットワーク型組織」の話の伏線として、ハイエクの考えを紹介したかったのですが、紙幅やバランスの関係もあって、最終的には削りました。

 ***** 

     オリックスの元会長で、政府の規制改革会議議長などを歴任した宮内義彦氏は、次のように言っています。

 

    市場の自由化によって企業の参入を促し、競争によって効率性・生産性を高めることが規制改革の本質です。良い例かどうかは別として、ライドシェア大手の米ウーバーテクノロジーズを考えてみましょう。世界の主要国でウーバーが使えない国は数えるほどしかありませんが、日本はその数少ない国の1つです。無許可のタクシー営業である「白タク」行為と同じであるとされているためです。ウーバーは道路運送法違反、ということで議論はおしまいです。これでは世の中は変わりません。日本でウーバーを使えるようにするにはどういう法律改正が必要かという発想ではなく、タクシー業界を保護する既存の法律に新しい潮流を当てはめて拒否してしまっているのです。日本のタクシー料金が国際的にも割高なままなのは、こうした旧弊が維持されていることも一因ではないでしょうか。おそらくウーバーはタクシー業界にとって打撃になるでしょう。しかしそれは鉄道の登場でほろ馬車が衰退したのと同じで、歴史の必然と言える部分があります。[i]

 

    政府による過剰な規制に反対して、規制緩和や「小さな政府」を目指す経済思想は「新自由主義」(neoliberalism)と呼ばれます。

    海外ではイギリスのサッチャー政権や、アメリカのレーガン政権、日本では「官から民へ」を掲げた小泉内閣などが、これに近い政策をとったことで知られます。

    そうした立場をとる経済学者としては、『市場・知識・自由』[ii]ハイエク(Friedrich A. Hayek)や、『資本主義と自由』[iii]フリードマンMilton Friedman)らが有名です。

    ハイエクの考え方がよく表れている部分を、少しだけ紹介しておきます。

 

    われわれが利用しなければならない諸事情の知識は、集中された、あるいは統合された形態においては決して存在せず、ただ、すべて別々の個人が所有する、不完全で互いに矛盾する、分散された断片的な知識としてだけ存在する。(p.53)

 

    社会の経済問題は主として、時と場所の特殊事情における変化に急速に適応する問題であるということに、われわれが同意できるとするならば、最終的決定は、そのような事情をよく知っている人たち、つまり、重要な変化と、それに応じるため直ちに利用できる資源を直接に知っている人たちに委ねられなければならないということになる。(p.63)

 

    これは、第8章でお話しするネットワーク型の組織につながる考え方でしょう。

 

[i] 日本経済新聞「岩盤規制、穴を開けずに突き崩そう」2019年12月27日、https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53762760U9A221C1X93000/

[ii] F・A・ハイエク著、田中眞晴・田中秀夫編訳『市場・知識・自由 ―自由主義の経済思想―』(ミネルヴァ書房、1986年)

[iii] ミルトン・フリードマン著、村井章子訳『資本主義と自由』(日経BP、2008年)

 

佐藤耕紀

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国が民間の邪魔をする?: 政府の失敗

    今回も、著書のボツネタから。

    「政府の失敗」も経済学ではポピュラーなトピックスですが、紙幅の関係もあって、最終的には削りました。

 ***** 

    法律や規則によって、民間企業の創意工夫を活かしたチャレンジが阻害されているという話も聞きます。

    「宅急便」で知られるヤマト運輸は、国の規制とたびたび戦いながら、便利なサービスを充実させてきたことで知られています。あるテレビ番組では、次のように紹介されていました。

 

    宅急便の全国のネットワーク完成にかかった歳月は、なんと15年。ずいぶん長くかかっていますが、その原因となっていたのが運輸省(現在の国土交通省)でした。そもそも、運送業者が全国各地、町から町へと荷物を運ぶためには、運輸省が交付する路線免許が必要でした。「全国どこでも…」のサービスを目指すクロネコも、もちろん申請しました。ところが、これがほったらかしに。なぜそんな事になったのでしょうか。

    このことについて、東洋大学教授の松原聡さんは次のように説明しています。

    「地元の運送事業社がヤマトに対して免許を出すことにすごく抵抗したわけですよ。旧運輸省は地元の言う事を聞いちゃったんですね。だからヤマトが免許をくれと言ってもなかなか免許を出さない。ある種の意地悪をして、地元の言う事を聞いたために出さなかったんですね」。

    あまりにも理不尽なこの状況に、クロネコが怒った。1986年、自らの監督官庁である運輸省の大臣を相手に「不作為の違法確認の訴え」をするために裁判を起こすという、前代未聞の戦いを始めたのです。免許の申請を5年も放置した理由など、お役所が説明できるわけもなく、4ヶ月後にはあっさり免許を交付。[1]

 

    政府の規制によって「市場の失敗」(2-4)を是正できる可能性はあります。その一方で、政府の介入によってさまざまな問題や非効率が生じることもあります。これを「政府の失敗」(government failure)といいます。

    経済学者の八田達夫先生は、次のように書いています。

 

    「政府の失敗」の典型例は、さまざまな分野で設けられている参入規制です。ある業種への新規参入者を制限すると、既存の業者は価格を高く維持できます。したがって、ありとあらゆる業界は、自分の産業への新規参入者を制限しようとします。薬局業界がコンビニエンスストアでかぜ薬や胃腸薬を売らせない法律を国会に作らせたのはその1つです。理容師や美容師になるには、原則として、高校卒業以上でなければなりません。いったん美容師の資格を得た人が理容師の資格を取るためには、また2年間理容師学校に行って、ほとんど同じことをもう一度学ばなければなりません。理容師組合や美容師組合が国会議員にそのような規制を作らせたのです。さらに、日本では、弁護士の数を極端に少なくし、弁護士の資格を得た人々の競争を制限しています。例は枚挙にいとまがありません。こうした参入規制を除去することも、重要な経済政策のひとつです。[2]

 

[1] TBS「がっちりマンデー!!」2006年8月13日放送、https://www.tbs.co.jp/gacchiri/archives/2006/0813.html

[2] 八田達夫ミクロ経済学I 市場の失敗と政府の失敗への対策』(東洋経済新報社、2008年)

 

佐藤耕紀

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