「読者が選ぶビジネス書グランプリ2022」にノミネートされました。
ライザップの瀬戸健社長が、『週刊文春』で書評をお書きくださいました(2021年10月28日号、p.121)。
Kindle版も発売されました。
増刷(3刷)になりました。
はじめに
第1章 経営学の基本的な考え方を学ぶ 「費用対効果」
1-1 経営って、なに? マネジメントとリーダー
1-2 リーダーって、なに? リーダーシップと意思決定
1-3 インセンティブって、何? インセンティブとモチベーション
1-4 意思決定って、なに? 選択とトレード・オフ
1-5 費用対効果って、なに? 効率、生産性、経済性
1-6 経営の効率をどう測る? 費用対効果の実際
1-7 高いほど売れる「シーマ現象」 見せびらかし消費とヴェブレン効果
1-8 オスはメスより熱心? 繁殖戦略と費用対効果
1-9 動物にもヒエラルキーがある? 地位と権力闘争
1-10 なぜヒトは一夫一妻か? 費用対効果と配偶システム
1-11 仕事のデキる人が考えていること 選択と費用対効果
1-12 タクシー代をケチるような仕事をしちゃダメ? 費用だけを考える誤り、効果だけを考える誤り
1-13 ガンバリズムの体育会系? クラッシャー上司
1-14 費用も効果も考えない? お役所仕事
Column1 逃げるチャンスの問題? 状況による戦略の違い
第2章 賢く考え、正しく判断する心理学 「意思決定」
2-1 なぜ、コルテスは自軍の船を燃やした? セルフ・コントロールとコミットメント
2-2 安ければ遠くても買いに行く? 意思決定と機会費用
2-3 紛失したチケットを買い直す? 心の会計
2-4 他人に迷惑をかける? 外部効果、市場の失敗、政府の失敗
2-5 なぜ、ダイエーは衰退した? 組織の惰性と現状維持バイアス
2-6 苦痛は喜びの2倍? 損失回避
2-7 賭けに出るのはどんなとき? リスク回避とリスク追求
2-8 「会社の利益」と「自分の利益」、どっちが大事? インセンティブと意思決定
2-9 最後の晩餐はどこで? 活用と探索、イノベーション
2-10 食べ放題で元をとる? 埋没費用とコンコルド効果
2-11 飛行機に乗るのは怖い? 想起容易性バイアス
Column2 ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスでトルネードが起こる? 複雑系とバタフライ効果
第3章 価格のしくみを理解して、売上と利益を増やす 「価格戦略」
3-1 人を見て値段を変える? 価格差別、支払意思額、固定費と変動費
3-2 高級ホテルでも原価は1000円以下? 限界費用
3-3 23円の値下げで売上が30倍? 価格弾力性、衝動買い
3-4 子ども料金や学割でお店が儲かる? 価格弾力性による価格差別
3-5 なぜ、文庫本は時間差で発売される? 価格スキミング
3-6 なぜ、みんなZoomをつかう? ネットワーク効果、先行者優位、勢力拡大価格
3-7 なぜ、プリンタは安すぎる? キャプティブ価格
3-8 なぜ、ハンバーガーを100円で売って儲かる? マージン・ミックス
3-9 割引クーポンの真の狙いは? バージョン分けと極端回避
Column3 リアルでチェックして、ネットで買う? ショールーム化
第4章 相乗効果を生み、コストを下げる 「多角化戦略」と「経済性」
4-1 なぜ、吉野家はメニューを増やした? リスク分散と経営多角化
4-2 なぜ、鉄道会社は商業施設を経営する? 多角化戦略、選択と集中
4-3 なぜキユーピーは野菜に参入した? 事業の相乗効果
4-4 「銀のさら」と「釜寅」は同じお店? シナジー、範囲の経済性
4-5 なぜ、「俺のフレンチ」はこんなに安い? 回転率と損益分岐点
4-6 なぜ、セブン‐イレブンは急に増える? 規模の経済性、速度の経済性、密度の経済性
4-7 なぜ、先輩には余裕がある? 経験効果
Column4 わざと座り心地の悪いイスをつかう? 回転率をめぐる戦略
第5章 ライバルとの戦いを勝ち抜く 「競争戦略」
5-1 星野社長のキャリアを変えた経営理論 ポーターの競争戦略
5-2 なぜ、マクドナルドはハンバーガーを59円で売れた? コスト・リーダーシップ戦略
5-3 なぜ、iPhoneは高くても売れる? 差別化戦略(1)
5-4 なぜ、モスバーガーはマクドナルドの3倍の値段で売れた? 差別化戦略(2)
5-5 なぜ、カーブスには鏡がない? コスト・集中戦略とノー・フリル(1)
5-6 なぜ、格安航空は中古の飛行機をつかわない? コスト・集中戦略とノー・フリル(2)
5-7 なぜ、クラフト・ビールは高価格で売れる? 差別化・集中戦略、競争戦略の実例
5-8 なぜ、ルイ・ヴィトンはセールをやらない? 価格競争
5-9 コカ・コーラはレシピの秘密をどう守っている? 資源ベース理論
5-10 競争しない競争戦略? ニッチ戦略、ブルー・オーシャン戦略、「協争」
5-11 世界での日本企業の地位は? 世界のトップ企業ランキング
5-12 なぜ、日本の企業は姿を消した? 身近な商品の世界シェア
Column5 ラモスさんが指摘する日本サッカーの弱点 SWOT分析
第6章 みんなで協力して目的を実現する 「組織」
6-1 協力するか、裏切るか 囚人のジレンマ
6-2 よそ者には冷たい? 血縁者びいきと内集団バイアス
6-3 自分は嫌だけど、他人にはやってほしい 社会的ジレンマ、共有地の悲劇、自己成就する予言
6-4 他人の損は自分の得? 合成の誤謬
6-5 相手のマネをするのが最強? 協力の進化と因果応報戦略
6-6 情けは人のためならず? 互恵的利他主義
6-7 群れるのには理由がある? 組織の起源と存在理由
Column6 組織って、なに? 組織の3要素
第7章 やる気と個性を活かして、強いチームをつくる 「モチベーション」と「リーダーシップ」
7-1 趣味なら平気で徹夜できる? 内発的モチベーション、心理的反発
7-2 やる気が出ないのは、なぜ? 期待理論、達成欲求、親和欲求、権力欲求
7-3 どうしたらやる気が出る? 作業興奮
7-4 仕事の心理は男女で違う? インポスター症候群、成功への恐怖、女王蜂症候群
7-5 モチベーションは高すぎてもダメ? モチベーションと成果
7-6 「叱る」と「褒める」、どっちがいい? 星野社長の信念、平均への回帰
7-7 評価のしくみが行動を変える? 減点主義と加点主義
7-8 どんな野球チームが強い? 個人インセンティブと集団インセンティブ
7-9 違いはどこにある? マネジャーとリーダー
7-10 優れたリーダーとはどんな人? PM理論
7-11 選挙では背の高い方が勝つ? 権威とハロー効果
7-12 権威はどこから生まれる? 地位、能力、人間力
Column7 がんばって報われないと燃え尽きる? 学習された無力感
第8章 DX時代の組織のカタチを考える 「ヒエラルキー」と「ネットワーク」
8-1 大組織の経営に必要なものは? 近代経営の歴史
8-2 マニュアルで教育するとバカの大量生産になる? 官僚制と訓練された無能
8-3 何のためか誰も知らない? 手段の目的化、「休まず、遅れず、働かず」
8-4 節約すると怒られる? セクショナリズム、予算のつかい切り
8-5 よいリーダー2人より、悪いリーダー1人がまし? 命令の統一、管理の幅、集権と分権
8-6 よいマネジメントは環境によって違う? ヒエラルキーとネットワーク
8-7 道徳には2種類ある? 統治の倫理と市場の倫理
8-8 「2の99乗」はいくつ? DXと情報革命
8-9 「ブラックホーク・ダウン」の衝撃 アメリカ陸軍の組織改革
8-10 この指とまれ? 21世紀型の組織
8-11 ヒエラルキーはもはや機能しない? チーム・オブ・チームズ(1)
8-12 「権限移譲」するとどうなる? チーム・オブ・チームズ(2)
8-13 正確さよりもスピード チーム・オブ・チームズ(3)
8-14 正反対のマネジメント? ヒエラルキー型とネットワーク型(1)
8-15 マネジメント・システムのまとめ ヒエラルキー型とネットワーク型(2)
Column8 生物にも2つのタイプがある? K戦略とr戦略
第9章 地位をめぐる競争のなかで、自分の価値を高める 「人材マネジメント」
9-1 つい他人と比べてしまう? 地位商品と対比効果
9-2 トランプ大統領の交渉術? ドア・イン・ザ・フェイス
9-3 DXで人間はむしろ忙しくなった? 「赤の女王」、ボトルネック
9-4 食事にありつけるのは利己心のおかげ? 分業・専門化と交換
9-5 誰でも必ず役に立つ? 絶対優位と比較優位
9-6 秋元康さんが最も重要と考えるヒットの条件 人材の差別化と希少価値
Column9 AIとの競争で生き残る人材は? 機械との競争
第10章 豊かな人生を切り拓く 「お金」と「時間」と「知識」のマネジメント
10-1 ギャンブルでお金を稼げる? 還元率、期待リターン
10-2 最も効率のよい投資方法は? 投資とリターン
10-3 投資の所得は、労働の所得を超える? 『21世紀の資本』、投資とリスク
10-4 歯磨きしながら何をする? 巧遅は拙速に如かず、平準化、同時並行
10-5 脳の外に記憶する? 外部記憶とスケジュール管理
10-6 どれを先にやる? 仕事の優先順位(1)
10-7 食事をしてから移動? 移動してから食事? 仕事の優先順位(2)
10-8 クリティカル・パスって、なに? 仕事の優先順位(3)
10-9 「どらえもん」に描かれる世界のしくみ 知識のパワー
10-10 学校の勉強は役に立つ? 何をどう学ぶか
10-11 なぜ、ヨーロッパの駅には改札がない? 世界を見て、日本を考えよう
Column10 なぜ、スティーブ・ジョブズは同じ服ばかり着ていた? 決断疲れ
第11章 少子高齢化に向き合い、生産性を高める 「働き方改革」
11-1 なぜ、「働き方改革」が必要なのか? 日本の財政
11-2 なぜ、日本の財政は悪化したのか? 少子高齢化
11-3 日本の働き方は変わったのか? 日本の長時間労働
11-4 正社員の労働時間は飛び抜けて長いまま? 日本の労働時間
11-5 日本の生活水準はどの程度? 日本の生産性
11-6 日本の社員は何でも屋? ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用
11-7 燃え尽きず生きるために 読者へのメッセージ①
11-8 自分らしく生きるために 読者へのメッセージ②
おわりに
はじめに
この本を手にとってくださって、ありがとうございます。
私はかれこれ20年以上、防衛大学校で経営学を教えてきました。
名刺交換をすると、「防衛大で経営学ですか?」と聞かれることがあります。防衛大は自衛隊のリーダーを育てる学校ですから、ビジネスを連想させる「経営学」にはそぐわないと思われるのかもしれません。
防衛大では自衛隊の仕事に関係する教育や訓練を行っていますが、それとともに、幅広い一般教養も重視されます。大学卒業の資格を得るための教育課程では「一般大学と同じように教育する」[i]ことになっており、多くの大学で教えている「経営学」は、防衛大のカリキュラムにも入っています。
経営学では組織のマネジメントや戦略、リーダーシップについて学びますから、自衛隊のリーダーにとってもかなり役立つという話を卒業生から聞きます。
日本を代表する経営学者の野中郁次郎先生も、かつて防衛大で教鞭をとりました。野中先生が防衛大の先生らとともに執筆した『失敗の本質』[ii]は、太平洋戦争での日本の敗因を分析したもので、組織論の名著といわれます。
この本を書くにあたって最初に考えたのは、マーケティングでいうターゲット(想定読者)やコンセプト、つまり、どういう性格の本にするかということでした。
世の中に、経営書やビジネス書はあふれています。ありきたりではない、この本ならではの魅力を打ち出さなければならないと思いました。経営学風にいえば、「コモディティ」にならないよう、「差別化」するということです(3-5)。
私はかねてから、経営学者の文章はともすれば難解で、実際に何の役に立つのかわかりにくいこともあると思っていました。その一方で、実務家やコンサルタントの解説は、ときとして論理性や根拠に乏しいとも感じていました。
そこで、科学的な理論に裏打ちされつつも、「わかりやすい」「役に立つ」にこだわった本をつくりたいと考えたのです。
読者にとって理想的な経営書は、短い時間で理解できて、しかも役に立つというものでしょう。そのような、読者にとってコスト・パフォーマンス(費用対効果)のよい本をつくろうと思いました。
経営学を学ぶと、どんなメリットがあるのでしょうか。
人それぞれ、人生でやりたいことはたくさんあると思います。それを実現するには、「お金」や「時間」や「知識」が必要です(10章)。そうした「資源」(1-4)が足りないために、やりたいことを満足にできないという人が多いのではないでしょうか。
経営学の基本は、「費用対効果」(効率、生産性)という考え方です。これを理解して実践すれば、短い時間で多くのことをこなして、「お金」や「時間」や「知識」を得られるでしょう。自由に好きなことができる人生に近づけるのです。
もう少し具体的にいえば、経営学を学ぶことで、「要領よく仕事をする」(第1章)、「賢い判断をする」(第2章)、「売上や利益を増やす」(第3章)、「小さな費用で大きな成果をあげる」(第4章)、「ライバルとの競争に勝つ」(第5章)、「組織のしくみを理解する」(第6章)、「やる気を活かす」(第7章)、「マネジメントのしくみを理解する」(第8章)、「自分の価値を活かす」(第9章)、「豊かな人生を切り拓く」(第10章)、「生産性の高い働き方をする」(第11章)、といったことのヒントが見つかるはずです。
この本では、「自分が若いころに知っていたら、きっと仕事や人生に役立っただろう」と思う経営学の知識を、できるだけわかりやすくお伝えしようと思います。
経営学を学びたい社会人や、学生のみなさんを想定読者として、ふだんの授業で話すように書こうと思います。
難しい数式のようなものはつかわず、言葉で腑に落ちるように説明したいと思います。
本の構成については、このあとの「目次」に詳しい見出しがあります。各章の最初でも、内容を簡単に紹介します。
それではしばらくのあいだ、経営学の話にお付き合いください。
[i] 防衛大ウェブサイト「教育課程」https://www.mod.go.jp/nda/education/academic.html
[ii] 戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎著『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(中央公論新社、1991年)
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