(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

経営学の紹介 & Coffee Break(写真、紀行、音楽など)

経営学

「老後2000万円問題」にどう備える?(6)インデックス・ファンドが最強?

*投資について、ここでは私の考えを書いているだけで、読者におすすめするつもりはありません。投資の結果については責任をもてませんので、ご自身の判断と責任でお願いいたします。 お金というのは、あくまでも何かをするための手段です。 手段が目的化し…

「老後2000万円問題」にどう備える?(5)「現金」や「預金」が安全だと思うのは錯覚?

*投資について、ここでは私の考えを書いているだけで、読者におすすめするつもりはありません。投資の結果については責任をもてませんので、ご自身の判断と責任でお願いいたします。 前回は、米国の家計は資産の半分以上を「投資信託」「株式等」(「現金・…

「老後2000万円問題」にどう備える?(4)毎年100万円を投資すると、40年後には2億円を超える

*投資について、ここでは私の考えを書いているだけで、読者におすすめするつもりはありません。投資の結果については責任をもてませんので、ご自身の判断と責任でお願いいたします。 前回は米国の長期データから、株式投資の実質利回りが年率平均で約7%に…

「老後2000万円問題」にどう備える?(3)何に投資するのがお得?

*投資について、ここでは私の考えを書いているだけで、読者におすすめするつもりはありません。投資の結果については責任をもてませんので、される方は、ご自身の判断と責任でお願いいたします。 何に投資をすれば、大きなリターン(収益)が期待できるので…

「老後2000万円問題」にどう備える?(2)投資とギャンブルはどう違う?

*投資について、ここでは私の考えを書いているだけで、読者におすすめするつもりはありません。投資の結果については責任をもてませんので、される方は、ご自身の判断と責任でお願いいたします。 投資(investment)の話をする前に、「ギャンブル」(gamble…

「老後2000万円問題」にどう備える?(1)「お金に働いてもらう」という考え方

*投資について、ここでは私の考えを書いているだけで、読者におすすめするわけではありません。投資の結果については責任をもてませんので、される方は、ご自身の判断と責任でお願いいたします。 前回の続きですが、誰でもいつかは第一線で活躍できなくなり…

日本では「老害」が起こりやすい?

最近「老害」という言葉をよく聞くという話から始まって、「先行者が変化を受け入れられず、後発者に追い越される」という「リープ・フロッグ」や「イノベーションのジレンマ」、改革を難しくする「スイッチング・コスト」や「Jカーブ効果」、「損失回避」の…

なぜ、改革は難しい?(3)「損失回避」

前回は、「組織の惰性」と「現状維持バイアス」の話をしました。 人間を含む動物が「惰性」や「現状維持バイアス」をもつように進化したのは、野生の厳しい環境のなかで、それが生存に有利だったからかもしれません。 たとえば「いつも通る道」「いつも食べ…

なぜ、改革は難しい?(2)「組織の惰性」「現状維持バイアス」

2017年までアメリカ大統領だったオバマ(Barack Obama)氏が、2008年の大統領選挙で掲げたキャッチ・フレーズは「Change」(変革)でした。 しかし、実際に組織を変えるのは、かなり難しいようです。 組織がなかなか変われないことを、比喩的に「組織の惰性…

なぜ、改革は難しい?(1)「スイッチング・コスト」「Jカーブ効果」

前回と前々回は、「旧い制度や技術での成功者(先進国やトップ企業)が、新しい潮流に乗り遅れ、後発者(発展途上国や新興企業)に追い抜かれる」という「リープフロッグ」や「イノベーションのジレンマ」の話をしました。 旧いやり方に慣れ親しみ、そこで地…

なぜ「老害」が起こる?(2)「イノベーションのジレンマ」

前回の「リープフロッグ」と同じようなことが、ビジネスの世界では「イノベーションのジレンマ」(innovator's dilemma)として知られます。 簡単にいえば、「旧い技術での成功者が、新しい技術への移行に乗り遅れて衰退する」ということです。 旧い技術で優…

なぜ「老害」が起こる?(1)「リープフロッグ」

前回は、環境の変化が速くなり、古い知識はどんどん時代遅れになり(知識の陳腐化)、学び続けなければ生き残れない、大変な時代になったという話をしました。 最近「老害」という言葉をよく聞くようになりましたが、これは上の話と関係があるのかもしれませ…

「質問力」の時代?(2)プロンプト・エンジニアリング

前回の続きです。 これからは、誰もがAIというアシスタントを抱え、そのサポートを受けて仕事をするようになるでしょう。 管理職が部下を活用してきたように、これからは全員がAIを活用するのです。 AIから的確な情報を引き出すには、質問や指示の仕方を工夫…

「質問力」の時代?(1)生成AIの衝撃

このところ「生成AI」が話題になっています。 とくに注目されたのは「ChatGPT」でしょう。 ただ、ごく普通の人にとっては「どこでどう始めるのかわからない」「高度な機能は有料」など、敷居の高いところもあり、とくに日本での利用率は伸び悩んでいるようで…

できない人ほど自信過剰?(1)「ダニング・クルーガー効果」と「楽観バイアス」

心理学では「能力の低い人ほど、自己評価が高い」という現象が知られており、ダニング・クルーガー効果と呼ばれます。(*1) 心理学者の榎本博明先生は、次のようにまとめています。 ……心理学者のダニングとクルーガーは、いくつかの能力を測定するテストを…

お正月に読んだ本『怪獣人間の手懐け方』(読書メモ)

正月休みに『怪獣人間の手懐け方』という本を読みました。 カリスマ編集者・箕輪厚介さんの破天荒な仕事ぶりが描かれ、面白く参考になる本でした。 そのなかで、次のような話がありました。 田端信太郎は『ブランド人になれ!会社の奴隷解放宣言』で金魚鉢理…

覚える必要のない時代?(2)これから必要なこと

今年も、どうぞよろしくお願いいたします。 (前回の続きですが)新年にあたって、これからの時代に必要なことを考えてみましょう。 インターネットの膨大な情報をAIが一瞬で要約するようになると、私たちは巨大な「外部記憶」を、ますます便利に使いこなす…

覚える必要のない時代?(1)「外部記憶」と「生成AI」

「やろうと思っていた用事を、うっかり忘れてしまった」という経験は誰にでもあるでしょう。 これは「記憶」(memory)ができないというより、記憶をタイムリーに思い出せない、「想起」(evoke)できないという問題でしょう。 人間の想起能力は貧弱なので、…

宣伝しない宣伝戦略? (3)「ツァイガルニク効果」

以前、「終わった課題は忘れ、やりかけの課題は気になる」という「ツァイガルニク効果」(1) (2)の話をしました。 「内容を事前に一切明かさない」という宣伝手法がうまくいく背景には、ツァイガルニク効果もあるのかもしれません。 私たちの記憶力(memo…

宣伝しない宣伝戦略? (2)「希少性」

前回の続きです。 「内容を事前に一切明かさない」という宣伝手法がうまくいく背景には、「希少性」(scarcity)を求める人間心理もあるのかもしれません。 私たちは、希少なもの、珍しいものに心をひかれます。 たとえば、不良品はふつう価値が低くなるもの…

宣伝しない宣伝戦略? (1)「心理的反発」

今年の夏休みに、宮崎駿さんの『君たちはどう生きるか』という映画を見ました。 夢を見ているような、不思議な印象の映画でした。 興行収入は2023年9月の時点で80億円を超え、海外の配給も好調で、採算はとれる見込みのようです。(*1) この映画では、「内…

なぜ「PayPay」はこんなに便利?(4)

前回の続きです。 これまでの業績を見るかぎり、PayPayの「浸透価格」戦略は、教科書どおりに成功しているようです。 先行投資が功を奏したのだと思われますが、決済サービスのなかでPayPayの利用率(複数回答)は49%と、楽天カード(46%)を抜き、トップ…

なぜ「PayPay」はこんなに便利?(3)

前回の続きです。 「先行者優位」「スイッチング・コスト」「ロック・イン」のある業界では、「浸透価格」(penetration pricing)という戦略が有効です。 「(当初は)利益を度外視した低価格で、市場シェアの拡大をはかる」ということです。 PayPayも、当…

なぜ「PayPay」はこんなに便利?(2)

前回の疑問は、「カード決済やタッチ決済ではできなかったことが、なぜPayPay(QRやバーコード)で次々と実現するのか」というものでした。 これは簡単にいうと、スマホが読み取り端末になったからではないでしょうか。 カード決済やタッチ決済では、読み取…

なぜ「PayPay」はこんなに便利?(1)

今年の夏休みに「尾瀬ヶ原」を歩いたのですが、トイレに入ると「1回100円」の張り紙がありました。 山で有料のトイレは珍しくないのですが、驚いたのは「PayPay」でも支払えるということで、QRコードが貼ってありました。 そういえば、カード決済やタッチ(…

どうやって決める? いろいろな「意思決定」

意思決定には、いろいろなタイプがあります。 「正確さより、スピードが重要」ということもあります。 たとえば「敵に奇襲された」「船が沈む」といった緊急時に、みんなで対策を考える時間はないでしょう。 全員で一貫した行動をとる必要もあります。 「半…

言葉にはできないが、見ればわかる? 「暗黙知」

かつて、アメリカ連邦最高裁の判事だったスチュワート(Potter Stewart)は、「ポルノグラフィーを定義するのは難しいが、見ればわかる」と言いました(*1)。 科学哲学者のポランニー(Michael Polanyi)は、「われわれは語ることができるより、多くのこと…

見た目が9割? 「ハロー効果」

前回は「ステレオタイプ」の話をしました。 今回は、それと似た「ハロー効果」(halo effect、後光効果)について、お話ししましょう。 「ハロー効果」は「目を引く特徴から連想されるイメージで、他の多くのことを推測してしまう」ということです。 ハロー…

ゴールディン教授の2023年「ノーベル経済学賞」受賞にちなんで: 「ステレオタイプ」と偏見

今日(2023年10月9日)発表された2023年のノーベル経済学賞は、ハーバード大学の女性研究者、ゴールディン(Claudia Goldin)教授に授与されました。 日本経済新聞には「ノーベル賞にゴールディン氏 男女の賃金格差、要因解明」という見出しが踊りました。 …

なぜ、マネをしてしまう? 「同調」「ヒューリスティック」

前回は、「模倣自殺」や「模倣犯罪」の話をしました。 私たちには「他人のマネをしたくなる」という心理的な「バイアス」(bias、傾向、クセ)があるのです。 社会心理学では「同調」(conformity)といいます。 アメリカなど個人主義の文化よりも、日本など…