今回も著書のボツネタから。
面白いテーマだとは思うのですが、やや抽象的でわかりにくいような気がして、最終的には外しました。
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組織のマネジメントでは「全体は部分の総和ではない」という考え方が重要でしょう。
いろいろな商品の間に補完性や代替性があったり、いろいろな事業の間で相乗効果がはたらく、という話をしましたが、組織のメンバーにもそうした現象が起こります。
「一緒に働くことでお互いの価値を高め合う」(補完性)ということもあり、「どちらかがいれば、もうひとりは必要ない」(代替性)ということもあります。メンバーどうしの相性をみながら、チーム全体として力を発揮する組み合わせを考えなければなりません。
「要素還元主義」(reductionism)という言葉があります。全体を理解するには、構成要素をひとつひとつ調べればよいという考え方です。たとえば人体を理解するには、脳や心臓といった体の構成要素を調べて、それぞれがどんな機能を果たしているのかを明らかにしていけばよいということです。
部分どうしの相互作用(interaction、かかわり合い)が理解しやすいものなら、要素還元主義は有効です。しかしこれが複雑になると、構成要素を調べるだけでは全体像を理解することができません。
下の図は、点描画法で有名なスーラ(Georges Seurat)の「サーカスの客寄せ」という作品の一部です。
- スーラの点描画
参照:メトロポリタン美術館、https://www.metmuseum.org/art/collection/search/437654
「点描」というとおり、この絵はいろいろな色の点によって描かれています。しかし、個々の点の色や形をいくら詳しく調べても、絵の全体像については何もわかりません。全体像は、個々の点の位置や色が織りなす関係性の総体として浮かび上がるのでしょう。
このように「部分にはない性質が全体レベルで現れる」ことを「創発」(emergence)といいます[1]。
要素還元主義に対して、「ものごとは全体として捉えなければ理解できない」とする考え方を「全体論」(holism)といいます。
組織の総合力も、個々のメンバーの相互作用から創発するものでしょう。
[1] 「創発」に興味のある方には、以下の本をおすすめします。スティーブン・ジョンソン著、山形浩生訳『創発 蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク』(ソフトバンククリエイティブ、2004年)
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