意思決定には、いろいろなタイプがあります。
「正確さより、スピードが重要」ということもあります。
たとえば「敵に奇襲された」「船が沈む」といった緊急時に、みんなで対策を考える時間はないでしょう。
全員で一貫した行動をとる必要もあります。
「半数が反撃や船の復旧をして、半数が逃げる」ような、どっちつかずの対応はダメでしょう。
そういうときは「リーダーが瞬時に判断し、全員が従う」というスタイルがよいのかもしれません。
「どちらでもよいが、どちらかに決める必要がある」ということもあります。
たとえば、日本やイギリスではクルマは左側通行ですが、アメリカや大陸ヨーロッパでは右側通行です。
どちらでもよいのですが、決めておかなければ、危なくて道を走れません。
そういうタイプの決定は、多数決などでよいのでしょう。
「まかせるほうがよい」ということもあります。
たとえば、上司が部下にランチをご馳走するとき「君はこれ、あなたはこれ」と、注文を全部決めてしまったら、みんながっかりするでしょう。
部下のほうが詳しく、部下にとって重要な(上司にとって重要でない)決定は、部下にまかせればよいのです。
前回お話しした「暗黙知」を必要とする決定も、そういう知識をもつ人にまかせるのがよいのでしょう。
経済学者のカッソン(Mark Casson)は、次のように言います。
文脈を知らないと正しく理解できない「暗黙の」情報を伝えるのは、とても難しい。文脈を共有しない相手にそれを説明するには、多くの労力を必要とする。情報をあつかうときは、そういうコミュニケーション・コストを節約するために、暗黙の情報をもつ担当者に意思決定をまかせるのがよい。(*1)
*1 引用した部分は、以下の原著から私が翻訳しました。翻訳書も紹介しておきます。
Casson, Mark, Information and Organization: A New Perspective on the Theory of the Firm, Oxford University Press, 1997, p.27
マーク・カッソン著、手塚公登・井上正訳『情報と組織 ―新しい企業理論の展開―』(アグネ承風社、2002 年)、p.29
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