(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

経営学の紹介 & Coffee Break(写真、紀行、音楽など)

なぜ「PayPay」はこんなに便利?(3)

前回の続きです。

先行者優位」「スイッチング・コスト」「ロック・イン」のある業界では、「浸透価格」(penetration pricing)という戦略が有効です。

「(当初は)利益を度外視した低価格で、市場シェアの拡大をはかる」ということです。

PayPayも、当初は「手数料無料」や「100億円あげちゃうキャンペーン」で巨額の赤字を出しながら、急速に利用者を増やす戦略をとりました。

 

PayPayの利用に大きなメリットがあれば、利用者は急速に増えます。

利用者が多ければ、PayPayを導入するお店も増えます。

お店にとって、利用者の多い決済サービスは魅力的だからです。

使えるお店が多いと便利なので、PayPayの利用者はますます増えます。

こうして「利用者が多いと、使えるお店が増える」「使えるお店が多いと、利用者がさらに増える」という好循環が生まれます。

ネットワーク効果」(network effect、利用者が多いほどサービスが便利になる効果)を活かして、利用者と使えるお店をどんどん増やしていくのです。

 

アプリのダウンロードや利用者登録をして、PayPayに慣れた利用者には「スイッチング・コスト」(switching cost、乗り換え費用)が発生します。

ほかの決済サービスに乗り換えると、ふたたび手続きをしたり、使い方を覚えなければなりません。

それはちょっと面倒なので、大きな不満がなければ、利用者はPayPayを使い続けます。
PayPayに「ロック・イン」(lock-in、囲い込み、閉じ込め)されるということです。

 

こうして、PayPayは「先行者優位」(first-mover advantages)を築きます。

出遅れたライバルとの差をどんどん広げて、最後はPayPayの「1人勝ち」(winner-take-all、勝者の総取り)になるのです。

 

(次回へ続く)

 

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