今回は、それと似た「ハロー効果」(halo effect、後光効果)について、お話ししましょう。
「ハロー効果」は「目を引く特徴から連想されるイメージで、他の多くのことを推測してしまう」ということです。
ハロー効果は、よく知られる「認知バイアス」(cognitive bias、心理的な傾向、思考のクセ)のひとつです。
たとえば、よく知らない男性について「あの人は慶応大学の出身だ」と聞くと、「慶応ボーイ」のイメージがわくかもしれません。
あるいは、よく知らない女性について「あの人は看護師さんだ」と聞くと、「白衣の天使」をイメージするかもしれません。
慶応大学の出身者にも、看護師さんにも、実際にはいろいろなタイプの人がいるはずですが、私たちはステレオタイプな先入観を当てはめてしまいがちです。
「背の高さ」のような身体の特徴も、ハロー効果を生みます。
有名な進化心理学者のピンカー(Steven A. Pinker)は、次のように言います。
……ほとんどの狩猟採集社会で、「指導者」を指す言葉は「大きな男(ビッグマン)」だし、実際に指導者はたいてい大男である。アメリカでは、身長の高い男のほうがよく雇用され、昇進や収入が多く(年間給与にして1インチあたり600ドル多い)、大統領に選出されやすい。1904年から1996年まで合計24回の大統領選のうち20回は、背が高いほうの候補者が勝った。個人広告欄をちらっと見れば、女性が背の高い男性を求めているのがわかる。(*1)
高身長がリーダーを連想させる理由について、社会心理学者のブレイカー( Nancy M. Blaker)らは、次のように言います。
……進化心理学の観点から、背の高い個人はより優位で、健康的で、知的だと感じられ、リーダーにふさわしく見られるだろう。健康な堂々たる身体は、リーダーにかなりの肉体的なリスクがあった祖先の環境では(おそらく、とくに男性にとって)間違いなくリーダーシップの重要な資質だった。(*2)
「身体的な魅力」のハロー効果も、多くの人が実感しているでしょう。
有名な社会心理学者のチャルディーニ(Robert B. Cialdini)は、私たちが「外見の良い人は才能、親切心、誠実さ、知性といった望ましい特徴をもっていると、自動的に考えてしまう」と言います。(*3)
社会心理学の研究では、見た目のよい人は「就職面接で採用されやすく、収入が高く、選挙で当選しやすく、裁判で有利になる」といったことが知られています。(*4)
*1 スティーブン・ピンカー著、椋田直子訳『心の仕組み(下)』(日本放送出版協会、2003 年)、p.109
*2 引用した部分は、以下の論文から私が翻訳しました。
Blaker, Nancy M., Irene Rompa, Inge H. Dessing, Anne F. Vriend, Channah Herschberg and Mark van Vugt, "The height leadership advantage in men and women: Testing evolutionary psychology predictions about the perceptions of tall leaders," Group Processes & Intergroup Relations, 16-1, 2013, pp.17-27, p.17
*3 ロバート・B・チャルディーニ著、社会行動研究会訳『影響力の武器 [ 第二版 ] ―なぜ、人は動かされるのか』(誠信書房、2007 年)、p.274
*4 前掲『影響力の武器 [ 第二版 ]』、pp.275-276
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