週末のCofee Breakです。
やがて香港を出発する決心をした沢木さんは、2つ目の経由地、バンコクへと飛びます。
目の端にキラキラするものが飛び込んでくるような気がした。私は雑誌から顔を上げ、窓の外を見た。
キラキラしているのは太陽の光だった。飛行機はいつしか南シナ海を抜け、インドシナ半島に入っていたらしく、窓の下には田園地帯が広がっていた。深い緑色の大地には無数の水田と沼があり、その銀色の鏡のような水面に今まさに沈もうとしている太陽の鈍い光が反射し、それがキラキラと輝いていたのだ。
恐らくはメナムであろう、大きく蛇行しながら流れている雄大な河にも、やはり夕陽が映っている。夕暮れ時の農家からは、夕餉の支度の煙が立ちのぼり、靄のように集落を覆っている。緑の大地は乳白色に溶けていき、やがてぼんやりと霞んでくる。
息を呑む美しさだった。これがタイという国なのだろうか……。私はまったく初めてのこの国の風景に、不思議ななつかしさのようなものを感じていた。
(沢木耕太郎著『深夜特急2 マレー半島・シンガポール』新潮社、2020年、第四章「メナムから マレー半島I」)
「メナム」というのは正確には「メナム・チャオプラヤー」、チャオプラヤー川のことでしょう。
「メナム」は単に「川」という意味ですが、おそらく「The River」、「川といえばチャオプラヤー」のようなニュアンスなのでしょう。
2016年に訪れたチャオプラヤー川。
カオサン通りにほど近いプラ・アーティットの船着き場から、北を見た眺め。
右手の大きな橋は「ラマ8世橋」。
バンコクで沢木さんが滞在した宿は「シープヤ通り」にあり、1泊の料金は30バーツ(450円)だったと書かれています。
この「シープヤ通り」がどこにあるのか、ちょっと調べてもわかりませんでした。
「チュラロンコーン大学へは、宿からそう遠くない」とも書かれているので、「シープラヤ」の船着き場と「チュラロンコン大学」のあいだを東西に走る「シープラヤ通り」(Si Phraya Road)のことかもしれせん。
1996年にテレビ放送された『劇的紀行 深夜特急』では、大沢たかおさん演じる主人公が、「シープヤ通り」ではなく「カオサン通り」に滞在したことになっています。
ドラマ版はところどころで原作と違っているのですが、小説の『深夜特急』に「カオサン通り」は出てこないはずです。
念のためKindle版『深夜特急』の全巻で「カオサン」を検索してみましたが、1件もヒットしませんでした。
2016年に訪れた「カオサン通り」の雑踏。
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