「先行者優位」が生まれる背景には、「規模の経済性」(economies of scale)や「経験効果」(experience curve)もあります。
「規模の経済性」は、「生産(販売)の規模が大きいほど、経済的(低コスト)になる」ということです。
そのしくみを理解するカギは「固定費」にあります。
費用は「固定費」(fixed cost)と「変動費」(variable cost)に分けられます。
固定費は、商品の販売量とあまり関係なく発生する費用です。
飲食店で、従業員やアルバイトに月給や時給でお金を払う(お客が来ても来なくても賃金が発生する)のなら、「人件費」は固定費といえるでしょう。
水道光熱費のうち、照明やエアコンの電気代のように、お客がいてもいなくてもかかるものも固定費でしょう。
売上に関係なく月額で払う「家賃」も固定費です。
これに対して変動費は、だいたい販売量に比例して発生する費用です。
「食材費」は、注文された料理を出すたびにかかるので、変動費でしょう(売上がなくても古くなった食材を廃棄しなければならないようなこともあり、厳密なものではありません)。
変動費を節約することも大切ですが、商品1つあたりの変動費が半分になるとか1/10になるということは、ふつうは考えられません。
これに対して商品1つあたりの固定費は、商品の販売量が2倍になれば半分になり、10倍になれば1/10になります。
たとえば1杯1000円のラーメンを売って、食材などの変動費は1杯あたり400円だとします。
会計学では、売上から変動費を引いたものを「限界利益」(marginal profit)といいます。
このラーメンの限界利益は、売上の1000円から変動費400円を引いて、1杯あたり600円です。
限界利益から、さらに固定費を引いたものが利益になります。
ここでは、アルバイトの給料が月100,000円、お店の水道光熱費が月50,000円、お店の家賃が月100,000円として、これらを合計した250,000円が毎月の固定費だとしましょう。
お店に閑古鳥が鳴いて、ラーメンが月に10杯しか売れないとすると、売上は10,000円(1,000円×10杯)です。
ここから変動費の4,000円(400円×10杯)を引いて、限界利益は6,000円になります。
ここから固定費の250,000円を引くと、244,000円の大赤字です。
ラーメンが月に100杯売れると、売上は100,000円(1,000円×100杯)です。
ここから変動費の40,000円(400円×100杯)を引いて、限界利益は60,000円になります。
ここから固定費の250,000円を引くと、まだ190,000円の赤字です。
ラーメンが月に1000杯売れると、売上は1,000,000円(1,000円×1,000杯)です。
ここから変動費の400,000円(400円×1,000杯)を引いて、限界利益は600,000円になります。
ここから固定費の250,000円を引いても、350,000円の利益が残ります。
月に10,000杯売れるような人気店になれば、売上は10,000,000円(1,000円×10,000杯)です。
ここから変動費の4,000,000円(400円×10,000杯)を引いて、限界利益は6,000,000円になります。
ここから固定費の250,000円を引くと、利益は5,750,000円です。
(実際には人気店になれば、新たに増える費用もあるでしょう)
このように、販売量に反比例して、商品1つあたりの固定費は小さくなります。
規模の経済性の最大の要因は、ここにあるのでしょう。
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