今回も、著書のボツネタからです。
重要なトピックスではありますが、話がちょっと難しくなったような気がして、最終的には削りました。
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事前の情報や知識によって、これから起こることを予想し、準備して対応することを「フィード・フォワード」(feed forward、事前対応)といいます。
官僚制では、事前につくられた計画や規則、マニュアルに従うといった、フィード・フォワードによるコントロールが多くつかわれます。
これに対して、「ことが起こってから、急いで対処する」というやり方を「フィード・バック」(feed back、事後対応)といいます。
私たちの日常生活では、フィード・フォワードとフィード・バックを併用しながら、さまざまな出来事に対応しています。
たとえば自転車に乗っているとき、「歩行者信号が点滅しているから、もうすぐ赤になるだろう」「車が左ウインカーを出しているから、左へ曲がるだろう」など、さまざまな情報から次に起こることを予測して、準備をしながら対応するでしょう。これがフィード・フォワードです。
しかし、ときには「子どもが急に飛び出してくる」といった予想外の事態も起きます。そうしたときは、慌てて急ブレーキをかけるなど、臨機応変に反射神経で対処するしかありません。これがフィード・バックです。
ノーベル経済学賞を授与されたサイモン(Herbert A. Simon)は、次のように書いています。
システムは一般に、過去の誤りを訂正するフィードバックと組み合わせて将来の見通しに基づくフィードフォワードを用いる場合に、より正確に自己の制御を行うことができる。しかし、不確実性を処理するために期待を形成することは、新たにそれ独自の問題をつくりだす。システムはときに予測に対し過剰反応をすることがあるため、フィードフォワードは安定化をもたらさないことがあり、不安定な振動状態を導くことがある。[1]
たとえば自転車に乗っていて、「1秒後に右から風速10mの風が吹く」と予想したとします。そして、この風で左に倒れないように、あらかじめ身体を右側に倒して対応するとします。これはフィード・フォワードです。
その予想が当たればいいのですが、予測が外れて実際には風が左から吹いたら、どうなるでしょうか。身体を右側に倒していたために、左からの風で右に転倒してしまうかもしれません。
外れるかもしれない予測をせずに、風が吹いてから対応すれば、多少はバランスを崩したとしても、転倒には至らないかもしれません。フィード・フォワードでは、予想が外れたときには、何もしないよりも結果が悪くなることがあります。そのため、不確実性が高いときにはフィード・バックによるコントロールが有効になります。
[1] ハーバート・A・サイモン著、稲葉元吉・吉原英樹訳『システムの科学 第3版』(パーソナルメディア、1999年)、2、「不確実性と期待」、「期待」
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