今回も、著書のボツネタから。
11-6で欧米(ドイツ)の働き方について書いたのですが、紙幅の関係で引用をかなりカットせざるを得ませんでした。
ここでは、当初のバージョンを紹介します。
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20年間にわたってドイツで働いたビジネスマンの隅田貫さんは、次のように書いています。[1]
日本では、部下に急ぎの仕事を任せる場面はしょっちゅうあります。
「明日の会議までに必要になったから、急いで資料をつくってもらえないか」と頼んだら、部下は渋々であっても、他の仕事を後回しにして資料をつくってくれます。
ところが、ドイツで部下に急な仕事を頼んだ時には「Ich habe keine Zeit(I have no time)」と上司の命令であってもキッパリ拒んできたので、最初は面食らいました。
ドイツ人はアサインメントがしっかり定められているので、自分の業務の範疇ではないことは基本的に引き受けませんし、既に決められたアサインメントを優先させます。(p.147)
ある日、会社のポストに届いていた郵便物をオフィスまで持って上がって、「これ、届いていたよ」と秘書のデスクに置きました。私宛ての郵便物があったので、気を利かせてほかの郵便物もすべてオフィスに持って行ったのです。
秘書に「ありがとう」とにこやかにお礼を言ってもらえるのかと思いきや、彼女は怒りました。
「これは私の仕事であって、あなたの仕事ではないでしょう」(p.164-165)
また、25年以上にわたってドイツで働いたジャーナリストの熊谷徹さんは、次のように書いています。
2016年、私がミュンヘンで日本人駐在員向けに講演をした時、日本企業のドイツ子会社の社長から「ドイツ人の社員に仕事を頼むと、よく拒否されるのですが、なぜでしょうか?」と質問された。
彼は「ドイツ人が言うことを聞かなくて、ホトホト困っている」という表情を浮かべていた。多くの日本人駐在員が、似たような悩みを抱えている。
おそらく労働契約書で明記されている範囲外の仕事を命じたのだろう。書類で明記されていない仕事は原則としてやる必要はないので、ドイツ人は堂々と拒否する。
たとえば、日本人社長がドイツ人社員に「秘書が休んでいるので、代わりに資料を50部コピーしてください」と頼んだとしよう。
日本人社員なら、社長からの頼みごとだし、多少面倒でも処理するだろう。
だが、多くのドイツ人社員は「それは私の仕事ではありません」と拒否すると思う。[2]
[1] 隅田貫『仕事の「生産性」はドイツ人に学べ 「効率」が上がる、「休日」が増える』(KADOKAWA、2017年)
[2] 熊谷徹『5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人 ドイツに27年住んでわかった定時に帰る仕事術』(SBクリエイティブ、2017年)、第1章、「それは私の仕事ではありません」
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