前回と前々回は、「旧い制度や技術での成功者(先進国やトップ企業)が、新しい潮流に乗り遅れ、後発者(発展途上国や新興企業)に追い抜かれる」という「リープフロッグ」や「イノベーションのジレンマ」の話をしました。
旧いやり方に慣れ親しみ、そこで地位や資産を築き上げた先行者は、新しいやり方に変えると失うものが多く、改めて学び直すのも億劫でしょう。
スイッチング・コスト(switching cost、乗り換え費用)が大きいわけです。
これに対して、まっさらな状態からスタートする後発者は、何の疑いもなく最先端のやり方を学んで使いこなし、やがて先行者を追い越すのです。
旧来の成功者は、新しい方式でガラガラポン(0からやり直し)になると、これまでに築き上げた地位やノウハウが無になります。
かつて小泉元首相が日本の構造改革に取り組んだとき、「既得権益層が抵抗勢力になっている」という話がよく出ましたが、守旧派が変化に抵抗するのは「小泉改革」に限った話ではないのでしょう。
改革を阻む要因にはJカーブ効果(J-curve effect)もあります。
これは、グラフにすると「J」の字のような形になるということで、いろいろな現象にみられます(有名なのは「為替と貿易収支」です)。
改革をするとたいてい、最初は成果(performance、業績、成績)が下がります。
不慣れなことを始めるので、どうしても暗中模索の試行錯誤となり、失敗も多いのです。
よい改革なら、その後はじわじわと成果が上がり、最終的には成功します。
これを縦軸を成果、横軸を時間としてグラフにすると、Jの字のように見えるわけです。
「PRESIDENT 2015年6月1日号」から引用(*1)
そういう初期の低迷を辛抱できるかどうかで、改革の成否が決まります。
しかし「抵抗勢力」はここぞとばかりに、「改革したら、かえって悪くなったじゃないか」と責め立てるでしょう。
改革に賛同してくれた協力者も、失敗が続けば疑念を抱くかもしれません。
改革を成功させるにはアーリー・サクセス(early success、初期の成功体験)が大切だとよく言われますが、実際には「初期の失敗」が多くなりがちなのです。
*1 PRESIDENT 2015年6月1日号「できる社長の経営改革の進め方」
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