(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

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先手必勝? 「先行者優位」と「ネットワーク効果」(3)「スイッチング・コスト」と「ロック・イン」

先行者優位を生む要因のなかでも、近年は「スイッチング・コスト」(switching cost、乗り換え費用)による「ロック・イン」(lock-in、閉じ込められる、ほかの商品に乗り換えられなくなる)が注目されます。

 

前々回お話しした「QWERTY」配列の例で考えましょう。

キーボードに慣れるには、かなりの時間や努力が必要です。

初めてタイピングを覚えるとき、ほとんどの人の手元には、すでに普及している「QWERTY」があります。

そして、いったん「QWERTY」を使いこなすようになると、「もっと速く打てる」と言われても、なかなか新しいキー配列に挑戦する気は起きないでしょう。

キーボードの購入費だけでなく、タイピングに慣れるまでの時間やストレスのようなコストもあるからです。

そういうスイッチング・コストによって、人々は「QWERTY」にロック・インされ、ずっと使い続けるのです。

 

前回お話ししたLINEやTwitterInstagramYouTubeTikTokでは、どうでしょう。

「みんな使っているから」と軽い気持ちで始めたアプリも、しばらく使っていると、他のアプリへ乗り換えるコストが大きくなります。

乗り換えると、新しいアプリを設定したり、使い方を覚えるだけでなく、以前のアプリで築いた信用や評判、連絡先やフォロワーも、0からやり直しになります。

そういうスイッチング・コストのために、人々は人気のアプリにロック・インされるのです。

 

ゲームでも機種を乗り換えると、やはり新しいゲーム機やソフトの購入にお金がかかり、使い方を覚えなければなりません。

 

Amazonのようなショッピング・サイトでも、他のサイトへ乗り換えると、名前や住所やクレジット・カードを新たに登録しなければなりません。

 

そういうスイッチング・コストのために、(大きな不満がなければ)人々はすでに使っている商品やサービスにロック・インされます。

こうして後発者は顧客を奪うのが難しくなり、先行者が優位を維持するのです。

 

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