前回は、環境の変化が速くなり、古い知識はどんどん時代遅れになり(知識の陳腐化)、学び続けなければ生き残れない、大変な時代になったという話をしました。
最近「老害」という言葉をよく聞くようになりましたが、これは上の話と関係があるのかもしれません。
「リープフロッグ」(leapfrogging、蛙飛び)という言葉があります。
「先進国を蛙飛びで追い越すように、発展途上国で新技術の普及が一気に進む」ことをいいます。
経済学者の野口悠紀雄先生は、次のように書いています。
「リープフロッグ」とは、蛙跳びのことです。
蛙が跳躍して何かを飛び越えるように、それまで遅れていた国が、ある時、急激に発展し、先を行く国を飛び越えて、世界の先頭に躍り出る。そして世界を牽引するのです。
中国の躍進ぶりが注目を集めています。これまでのように安い労働力で安い工業製品を大量に生産するだけでなく、AI(人工知能)などの新しい技術を駆使して様々な経済活動を始めているのです。そして、アメリカと覇権国の地位を争うまでになっています。
ところが、目覚ましい発展の背景を調べると、そのほとんどがリープフロッグで説明できるのです。「遅れていたことを逆手に取った」ということができますし、「失敗したから成功した」ということもできます。歴史を見ると、こうしたケースが数多く見られます。聖書に「後なるもの先になるべし」とあります(『マタイ伝』、第19章30)。この言葉は、その後の歴史の展開を予言していたと思われるほどです。……
(野口 悠紀雄『リープフロッグ 逆転勝ちの経済学』文春新書、2020年、「はじめに」)
たとえば、政府はマイナンバーカードと健康保険証の一体化を進めようとしていますが、「マイナ保険証」の利用率は、2023年末で5%にも満たないようです。(*1)
年金改革や医療制度改革もそうですが、古くからある制度を「環境の変化」や「技術の進歩」に応じて改革しようとしても、反対論が噴出して、なかなかうまくいかないようです。
むしろ、何もないところから0ベースで始めるほうが、最新の状況や技術を反映して、最先端のシステムを構築しやすいということもあるのでしょう。
家にたとえると、古い家を必要に応じて増改築していくと、だんだん造りが複雑になって、あちこちで辻褄の合わないところが出てきます。
いっそ更地にしてから、最新の技術と建材で、現状にぴったりの家を建て直すほうが簡単かもしれません。
世代間でも、古い技術にどっぷり浸かった年長の世代を、先端技術を使いこなす若い世代が「蛙飛び」で追い越すということはありそうです。
環境変化や技術進歩が速いほど、そういうことが起こりやすいのでしょう。
*1 朝日新聞DIGITAL「マイナ保険証の利用率、8カ月連続低下 若年層ほど利用しない実態も」2024年1月20日
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