前回の「リープフロッグ」と同じようなことが、ビジネスの世界では「イノベーションのジレンマ」(innovator's dilemma)として知られます。
簡単にいえば、「旧い技術での成功者が、新しい技術への移行に乗り遅れて衰退する」ということです。
旧い技術で優れているほど、新しい技術へのスイッチング・コスト(乗り換え費用)が大きくなり、時代遅れの旧技術にしがみつく傾向があるのです。
有名なのは、フィルム・カメラの時代にトップ企業だった「コダック」が、デジタル・カメラの時代に乗り遅れて衰退したという話です。(*1)
たとえば「ChatGPT」のような生成AIが話題になりましたが、以前紹介したように、日本での利用率は低迷しているようです。
おそらく将来的には、AIを使いこなさなければ、企業も人材も生き残れないでしょう。
しかし今日、明日のような短期で考えると、日々の業務で忙しい人たちに、AIをじっくりマスターする暇はありません。
慣れ親しんだ今までのやり方のほうが、とりあえずは仕事のスピードも速く、成果も大きいのです。
これまでのやり方で知識やノウハウを蓄積してきた旧世代にとっては、とくにそうでしょう。
生成AIのような新技術は、最初は欠点や不具合も多く、さほど魅力的には見えません。
しかし、そうこうするうちに新しい技術は急速に進歩し、古い技術にしがみついていると、どんどん時代遅れになります。
同じようなことは、(Windows95が発売され、PCとインターネットが一般に普及し始めた)1995年や、(初代のiPhoneが発売され、スマホの時代が始まった)2007年にも起こりました。
以前、すでに持っている知識の活用(exploitation)と、新しい知識の探索(exploration)という話をしました。
短期的には、既存の知識を活用するほうが高い成果が得られます。
しかし長期的には、適度に新しい知識を探索し、獲得していかなければ、時代遅れになり、成果も低くなります。
「短期の利益」と「長期の利益」のあいだには、しばしばトレード・オフ(trade-off、「二兎を追う者は一兎をも得ず」「どちらかを改善すれば、どちらかが悪くなる」)があります。
短期の利益(美食、飲酒、喫煙)を楽しめば、長期の利益(ダイエット、禁酒、禁煙=健康)は得られません。
短期の成果に目を奪われると、長期的には衰退するおそれがあるのです。
*1 日経BOOKプラス「「イノベーションのジレンマ」リーダー企業はなぜ衰退するか」2022年7月21日
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