週末のCofee Breakです。
沢木耕太郎さんが『深夜特急』の旅をしたのは、1974~75年です。
これまで紹介したように、50年近くの歳月を経た今も、各地でその「残影」を訪ね歩くことができます。
しかし残念ながら、もう二度と見ることができなくなった場所もあります。
そのひとつは、沢木さんが「大小」という博奕に興じた、マカオの「澳門皇宮」です。
地図で確かめもせず、行きあたりばったりに歩き、気に入った角をいくつか曲がっているうちに、再び海岸に出た。そこには何隻もの船が埠頭につながれていたが、中でも眼を奪われたのは、香港仔の水上レストランに似た、極彩色の中国船だった。
近寄ってみると、看板に澳門皇宮とあり、西式博彩場とも記されている。どうやらここもカジノのひとつらしい。しかし、リスボア・ホテルに比べると、いかにも場末の博奕場といった野暮ったさと凶々しさがあり、それがかえって東洋的な雰囲気をかもし出していた。
(沢木耕太郎著『深夜特急1 香港・マカオ』新潮社、2020年、第三章「賽の踊り マカオ」)
その後、この水上カジノは移転・閉業したようで、もはや往時の姿を見ることはできません。
上の引用文にある「香港仔の水上レストラン」も、消えた残影のひとつです。
香港仔、アバディーンは、数千隻の小船で暮らす水上生活者と水上のレストランが売り物の、香港でも屈指の観光地である。……
(沢木耕太郎著『深夜特急1 香港・マカオ』新潮社、2020年、第二章「黄金宮殿 香港」)
この水上レストラン「ジャンボ・キングダム」(珍宝王国)は、2020年に閉業しました。
私はそれまでに2回ほど香港を訪れており、見ようと思えば見る機会もあったのですが、結局は行かずじまいで、今となっては後悔しています。
「ジャンボ・キングダム」については以下の記事で詳しく書かれており、往時の写真も載っています。
DIAMOND online「トム・クルーズも来た香港の水上レストランの悲しい末路…盛衰の必然を考察」2022年6月22日
https://diamond.jp/articles/-/305150
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