(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

経営学の紹介 & Coffee Break(写真、紀行、音楽など)

『深夜特急』の残影を探して(4)香港

週末のCofee Breakです。

ふたたびスター・フェリーに乗り、九龍に戻った沢木さんは、彌敦道を北へ歩き、佐敦道を左へ曲がって、やがて「廟街」(Temple Street)に行き当たります。

 

    何百、いや何千という夜店が数百メートルにもわたって延々と続いているではないか。道の両側どころではない。道に四重の露店、そのさらに両側には普通の店舗がある。つまり、一本の道に六重の店がぎっしり並び、その間の細い路地になったようなところを、人々が揉み合うようにして通っている。

    夜店は圧倒的に衣料品屋が多かった。惣菜用の食料品はどこにも売っていない。ここは、昼間の皇后大道周辺の賑わいとは異なり、明らかに夜のための露店で占められていた。

……

    路上にテーブルと椅子が並べられ、そこで人々が子供たちと、あるいは恋人と夕食を盛大に食べていた。私もつられてその一軒の椅子に腰を下ろすと、主人は当然のことのように広東語で注文を訊いた。メニューなどという代物があるわけがない。隣の親父さんの食べているものを指さすと、主人は頷き、御飯の上に焼豚をいっぱいのせて持ってきた。チャーシューハン、でいいのだそうだ。ビールが呑みたくなり、注文すると、隣の親父さんがものも言わず一杯ごちそうしてくれた。

    路上にいい風が吹いてくる。音楽のように異国人の会話を聞きながら、焼豚をつつき、グラスを空ける。酔いがホロッと廻り、ゆったりとした幸せな気分が満ちてくる。

沢木耕太郎著『深夜特急1 香港・マカオ』新潮社、2020年、第二章「黄金宮殿 香港」)

 

2017年の廟街。

 

沢木さんは香港での滞在中、スター・フェリーがとくに気に入ったようです。

 

    スター・フェリーには、昼には昼、夜には夜と、その時刻によってそれぞれ異なる心地よさがあった。

    光の溢れる日中には、青い海の上に真っ白な航跡が描かれ、その上をゆったりと鳥が舞う。大気が薄紫に変わる夕暮れどきは、対岸の高層建築群に柔らかな灯が入りはじめる。そして夜、しだいに深まる闇の中で、海面に映るネオンが美しい紋様を描いて揺れるのだ。私はこのスター・フェリーに乗ると、それまで自分が身を置いていた街路の興奮から醒め、心が穏やかになっていくのを感じた。

沢木耕太郎著『深夜特急1 香港・マカオ』新潮社、2020年、第二章「黄金宮殿 香港」)

 

2016年、九龍(尖沙咀)から見たスター・フェリーと、対岸の香港島(中環)。

 

2017年、ほぼ同じ場所から見たスター・フェリーと、中環の夜景。

 

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