前回は「スイッチング・コスト」と「ロック・イン」の話をしました。
お客をロック・インして長期的な利益を大きくする「キャプティブ価格」(captive pricing)という戦略があります。
「キャプティブ」(captive)は「囚われた、監禁された」という意味で、「補完的な商品群のなかで、入り口になる商品の価格を安くしてお客を呼び込み、ロック・インしてから、他の補完商品で利益を出す」ということです。
ここで「補完商品」(complementary goods、補完財)というのは、「お互いの価値を高め合う商品」のことです。
たとえば「ハミガキ」だけあっても使いようがありませんが、「ハブラシ」とセットになると、毎日なくてはならない存在になります。
そういう関係にあるのが補完商品です。
「ピーナッツとビール」「パンとバター」のように、「片方だけのときよりも、両方そろったときに価値が高くなる」ような組み合わせが補完商品です。
「どちらかがあると、もう一方もほしくなる」ということです。
そういう性質を「補完性」(complementarity)といいます。
ついでにいうと「代替商品」(substitute goods、代替財)というものもあります。
これは「代わりになる」「どちらかがあれば、もう一方の必要性が小さくなる」ような商品の組み合わせです。
そういう性質を「代替性」(substitutability)といいます。
たとえば「ハミガキとマウス・ウォッシュ(洗口液)」は、あまり同時には使わないので代替商品でしょう。
「ピーナッツとポテトチップス」「ビールとウイスキー」「パンとごはん」「バターとマーガリン」なども代替商品でしょう。
プリンタとインクは、強い補完性のある商品です。
プリンタが売れれば、その後はくり返し、インクも買ってもらえます。
そこで販売者(プリンタとインクのメーカー)は、入り口になるプリンタの値段を安くして、お客を呼び込みます。
お客は交換時期になるまで、インクが高いことには気づかないかもしれません。
そしてプリンタを買ったお客には、スイッチング・コストが発生します。
他のプリンタに乗り換えると、その購入費や、新たに操作を覚える時間やストレスといった費用がかかります。
こうして販売者は、プリンタの価格を安くしてお客を誘い、ロック・インしてから、インクでゆっくりと利益をあげるのです。
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