週末のCofee Breakです。
香港での旅の始まりについて、沢木さんは次のように書いています。
「やがて書くことになる紀行文」というのは、もちろん『深夜特急』のことでしょう。
それはやがて書くことになる紀行文にもあるとおり、本当にまったく訳のわからないまま、九龍にある連れ込み宿風のホテルに長期滞在するところから始まった。
このホテルがあったのは、いまはもうアジアを旅行する人にとってはよく知られた存在になってしまったが、「重慶大厦」という名の雑居ビルの中だった。紀行文を書いた時点では、これをガイドブックとしてそのビルを探すような人が出てきたら困るなと思い、名前と場所をわざと曖昧にしておいた。曖昧にしておいたのは「重慶大厦」の名前や場所だけでなく、その中にあって私が泊まることになる宿の名前も微妙に変えておいた。英語名を「ゴールデン・パレス・ゲストハウス」、華字名を「金宮招待所」としておいたが、本当は英語名を「ゴールデン・ゲストハウス」、華字名を「金屋招待所」というのだった。「金宮」より「金屋」の方がいかにもうらぶれた感じは出ていたのだが、もしそこを見つけて泊まろうとした人がトラブルにでも巻き込まれたら困るなとよけいな配慮をしたのだ。
(沢木耕太郎著『旅する力 ―深夜特急ノート―』新潮文庫、2008年、p.135-136)
私が2016年に訪れたときも、「重慶大廈」は健在でした。
香港に着いた翌日、沢木さんは「重慶大廈」から「ネイザン・ロード」(彌敦道、Natian Road)を南へ歩き、「ザ・ペニンシュラ香港」を見つけます。
ネイザン・ロードを歩いていると、微かに潮の香りがしてきた。海が近いらしい。しばらく行くと、右手にその界隈には珍しい重厚な造りの建物が見えてきた。正面に廻って眺めると、それはどうやらホテルらしく、玄関口にはロールスロイスが何台も停まり、ポーターたちが大きなトランクやバッグを懸命に運び出していた。建物の壁にさりげなく名が出ている。
《THE PENINSULA》
これが有名なペニンシュラ・ホテルなのか、と私は嬉しくなった。イギリス王室の定宿というばかりでなく、世界の知名人を顧客として持っており、たとえばピーター・オトゥールが『ロード・ジム』を撮るため香港を訪れた際に泊まったのがペニンシュラだった、などという文章をどこかで読んだ記憶があった。
(沢木耕太郎著『深夜特急1 香港・マカオ』新潮社、2020年、第二章「黄金宮殿 香港」)
私が2016年に訪れたときの「ザ・ペニンシュラ香港」。
2017年、クリスマス・イルミネーションの「ザ・ペニンシュラ香港」。
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