週末のCofee Breakです。
香港での3日目、沢木さんは「スター・フェリー」で九龍から香港島へ向かいます。
彌敦道から梳士巴利道に出て、ペニンシュラやYMCAの前を通って少し行くと、埠頭が見えてくる。そこに九龍と香港島とを結ぶフェリーが発着するターミナルがあるのだ。スター・フェリー・ターミナル、華字にすれば天星碼頭。
……
九龍から香港島まで、所用時間はおよそ七、八分。その航海とも言えない短かい航海は、しかしなかなか気持のよいものだった。海上の微風も心地よく、対岸の高層建築群も美しい。これで十セントなら安いものだと思えてくる。
(沢木耕太郎著『深夜特急1 香港・マカオ』新潮社、2020年、第二章「黄金宮殿 香港」)
九龍(尖沙咀)のフェリー・ターミナルのあたりから見た、香港島の眺め(2017年)。
香港島(中環)のフェリー・ターミナル(2017年)。
スター・フェリーで香港島に渡った沢木さんは、セントラル(中環)に今もある「陸羽茶室」という老舗レストランで昼食をとり、「キャット・ストリート」へ向かいます。
キャット・ストリートは正式の名を摩羅街、ラスカー・ロウという。またの名を泥棒街。それは昨日盗まれたものが翌朝には出まわっているからだとも、それほどに安いからだともいわれている。
その通りを探しながら、坂道を登ったり降りたりしているうちに、偶然、露店が市をなしている通りに出てしまった。そこは坂道の石段に露天が並び、あらゆる種類の食品が商われている。肉、魚、野菜、穀物、果物、乾物、なんでもある。
肉には、牛があり、豚があり、羊があり、蛇があり、鶏がある。鶏は生きたものを売り、その場で絞める。生のものはもちろんだが、焼いたもの、いぶしたもの、茹でたもの、と料理に必要などのような肉でも揃っている。
上野のアメ屋横丁に似ていなくもないが、露店に並んでいる品数の豊富さと、そこで買い物をしている客の熱心さには、格段の差があるように思えた。しかも客は女性ばかりでなく、男性もまたその日の夕食のための一品一品を、あれこれと比較しながら丹念に買い求めていた。
その一帯は露店だけでなく、店舗を構えた商店の密集地でもあった。薬種問屋のエリアがあるかと思うと、金物屋のエリアが続き、生地屋や乾物屋がかたまっている通りもある。
だが、面白いのはやはり露店だ。坂道を一本移るごとに、さまざまな露店を見つけることができる。古着屋、雑貨屋、印刷屋、古本屋などはどこにでもあるだろうが、屋台のテレビ売りや路上の床屋などもいる。
(沢木耕太郎著『深夜特急1 香港・マカオ』新潮社、2020年、第二章「黄金宮殿 香港」)
キャット・ストリートのあたりの肉屋さん(2017年)。
キャット・ストリートのあたりの魚屋さん(2017年)。
キャット・ストリートのあたりの果物屋さん(2017年)。
キャット・ストリートのあたりの薬種問屋さん(2017年)。
⇒「写真紀行」の記事一覧はこちら。
⇒ ブログの概要(トップ・ページ)はこちら。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「宣伝会議」さまの実践講座に登壇しました。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆ 「読者が選ぶビジネス書グランプリ2022」にノミネートされました。
◆ ライザップの瀬戸健社長が、『週刊文春』で書評をお書きくださいました(2021年10月28日号、p.121)。
単行本、聴く本(オーディオブック、Audible)、電子書籍(Kindle、Kobo、Kinoppy、honto、Doly)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「マーケティング」【内容紹介】
◆ 「二子玉川 蔦屋家電」さまで、マーケティングの月間ランキング1位になりました(2022年5月、6月、9月)。
◆ 『日刊工業新聞』さまに書評が掲載されました(2022年2月7日)。
単行本、聴く本(オーディオブック、Audible)、電子書籍(Kindle、Kobo、Kinoppy、honto、Doly)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「意思決定」【内容紹介】
◆ 『PRESIDENT』2023年2.17号の「職場の心理学」のコーナーで、「絶対に失敗が許されない人の「意思決定力」養成法」と題した著者の記事が掲載されました(p.106-109)。
単行本、聴く本(オーディオブック、Audible)、電子書籍(Kindle、Kobo、Kinoppy、honto、Doly)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆