(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

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時は金なり?(5)「システム思考」

前回の「情報技術(ネット、スマホ、アプリ)で便利になったのに、かえって忙しくなったのはなぜ?」という問いに答える準備として、今回は「システム思考」(systems thinking)を紹介します。

環境ジャーナリストの枝廣淳子さんは、「システム思考」について次のように書いています。

 

    ひとつ、例を挙げましょう。かつて奄美大島ではハブに噛まれる人がいて、「問題だ」となりました。人々は「ハブをやっつけるには……そうだ、マングースだ!」と考え、マングースを連れてきて島に放しました。ところが、マングースは、ハブと命がけで戦う代わりに、ほかのもっと弱い動物を餌にしました。そうして、ハブは減らず、マングースは増え、天然記念物のアマミノクロウサギが絶滅の危機に瀕することになってしまったのです。

    この実話は、自然や社会のシステムはこのようにさまざまなものが複雑につながり合っているのに、その一部だけを取り出して考えると、期待した効果が生まれないばかりか、新たな問題を生み出すこともある、という一例です。そうならないよう、あらゆるものを「システム」として考え、分析するのが「システム思考」です。(*1)

 

似たような話に、「塞翁が馬」の故事があります。

塞翁は、飼い馬に逃げられるという不幸にあいます。

ところが、逃げた馬がもう一頭の馬を連れ帰るという幸運が訪れます。

しかし、その馬に乗った息子が落馬して怪我をするという災難にみまわれます。

ところが戦争が起こり、息子は怪我をしていたために召集されず、命拾いをするのです。

 

風が吹けば桶屋が儲かる」という話もあります。

風が吹くと、巻き上がる土ぼこりが目に入って、盲人が増えます。

盲人は三味線弾きになろうとして、三味線が売れます。

すると三味線の材料となる猫の皮が売れるので、猫が獲られて減ります。

猫が減ると鼠が増えて、桶をかじります。

それで桶屋の仕事が増えるという話です。

 

上の3つの話にあるように、因果関係や波及効果(spillover)が複雑に絡み合うシステムでは、ひとつの出来事が、後に予想外の結果をもたらすことがあります。

 

(次回に続く)

 

*1  ドネラ・H・メドウズ著、枝廣淳子訳『世界はシステムで動く いま起きていることの本質をつかむ考え方』(英治出版、2015 年)「訳者まえがき」

 

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