(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

経営学の紹介 & Coffee Break(写真、紀行、音楽など)

「ブランド・イメージ」の魔法(4)

私たちは「絵の美しさ」や「料理のおいしさ」や「音楽のすばらしさ」を評価するとき、「目にうつる映像」「舌に感じる味」「耳に聴こえる音」といったリアル・タイムの知覚だけでなく、さまざまな先入観やイメージも含めて総合的に判断します。

 

たとえば、次のようなことをお考えください。

 

あなたは長年の夢を叶えて、モネの『睡蓮』の絵を手に入れます。毎日、その美しさを堪能して、幸福感に満たされます。

ところがある日、その絵が偽物だとわかったらどうでしょう。

とても落胆するのではないでしょうか。

しかし、贋作とわかっても、絵の客観的な魅力はまったく変わらないはずです。

以前は楽しめた絵を、なぜ楽しめなくなるのでしょう。

 

訪問先で出された料理がとてもおいしくて、あなたが「これは何ですか?」と尋ねると、「カエルやカタツムリを調理したものです」と言われます。

その瞬間、人によっては吐き戻したくなるかもしれません。

それはなぜでしょう。

 

認知心理学者のブルーム(Paul Bloom)は「TED」というイベントで、次のような実験映像を紹介しています。(*1)

ジョシュア・ベルという有名なバイオリニストが、目立たない恰好をして、ワシントンの地下鉄駅で演奏をします。

世界的なバイオリン奏者が1億円の楽器を弾いたのですが、45 分間で集まった投げ銭は 3000 円台と、それほど多くはありませんでした。

肩書きを知らなければ、ふつうの人には演奏のすばらしさが伝わらないのでしょうか。

この実験では、ベルを知っている人が偶然通りかかって驚き、同情してお金を入れるというハプニングもあったそうです。

 

私たちの感覚は「客観的な実態」をそのままとらえたものではなく、先入観に大きく影響される「主観的なイメージ」だということが、おわかりいただけるでしょうか。

 

*1  TED「The origins of pleasure」

www.ted.com

 

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