私たちは「絵の美しさ」や「料理のおいしさ」や「音楽のすばらしさ」を評価するとき、「目にうつる映像」「舌に感じる味」「耳に聴こえる音」といったリアル・タイムの知覚だけでなく、さまざまな先入観やイメージも含めて総合的に判断します。
たとえば、次のようなことをお考えください。
あなたは長年の夢を叶えて、モネの『睡蓮』の絵を手に入れます。毎日、その美しさを堪能して、幸福感に満たされます。
ところがある日、その絵が偽物だとわかったらどうでしょう。
とても落胆するのではないでしょうか。
しかし、贋作とわかっても、絵の客観的な魅力はまったく変わらないはずです。
以前は楽しめた絵を、なぜ楽しめなくなるのでしょう。
訪問先で出された料理がとてもおいしくて、あなたが「これは何ですか?」と尋ねると、「カエルやカタツムリを調理したものです」と言われます。
その瞬間、人によっては吐き戻したくなるかもしれません。
それはなぜでしょう。
認知心理学者のブルーム(Paul Bloom)は「TED」というイベントで、次のような実験映像を紹介しています。(*1)
ジョシュア・ベルという有名なバイオリニストが、目立たない恰好をして、ワシントンの地下鉄駅で演奏をします。
世界的なバイオリン奏者が1億円の楽器を弾いたのですが、45 分間で集まった投げ銭は 3000 円台と、それほど多くはありませんでした。
肩書きを知らなければ、ふつうの人には演奏のすばらしさが伝わらないのでしょうか。
この実験では、ベルを知っている人が偶然通りかかって驚き、同情してお金を入れるというハプニングもあったそうです。
私たちの感覚は「客観的な実態」をそのままとらえたものではなく、先入観に大きく影響される「主観的なイメージ」だということが、おわかりいただけるでしょうか。
*1 TED「The origins of pleasure」
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「宣伝会議」さまの実践講座に登壇しました。
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◆ 「読者が選ぶビジネス書グランプリ2022」にノミネートされました。
◆ ライザップの瀬戸健社長が、『週刊文春』で書評をお書きくださいました(2021年10月28日号、p.121)。
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今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「マーケティング」【内容紹介】
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今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「意思決定」【内容紹介】
◆ 『PRESIDENT』2023年2.17号の「職場の心理学」のコーナーで、「絶対に失敗が許されない人の「意思決定力」養成法」と題した著者の記事が掲載されました(p.106-109)。
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