知らず知らずのうちに、私たちはさまざまなイメージに影響されます。
有名な例を紹介しましょう。
後半で解説をするので、まずは質問にお答えください。
<質問1>
おかしな質問ですが、「レモンは速いか、遅いか?」と聞かれたら、あなたの直感ではどちらでしょう?
<質問2>
下の図形には、それぞれ名前がついています。
ひとつは「ブーバ」(bouba)、もうひとつは「キキ」(kiki)です。
あなたの直感では、どちらの名前が、どちらの図形のものでしょう?
解説へ行く前に、イメージにまつわる別の例を。
白ワインに赤ワインのような色をつけると、目から入る情報に惑わされて、味も赤ワインのように感じるという研究があります。
また、実際にはまったく同じワインを、値段が違うように見せかけて飲ませると、「値段の高い」ワインのほうがおいしく感じられるという実験もあります。(*1)
さて、冒頭の質問に戻りましょう。
<質問1>では、多くの人は「速い」と答えます。(*2)
理由ははっきりしませんが、「瞬時に広がる鮮烈な酸っぱさ」(味覚)、「薄い黄色」「ラグビー・ボールのような形」(視覚)、「爽やかな香り」(嗅覚)などから連想される総合的なイメージが、「速い」と感じられるのでしょう。
<質問2>では、ほとんどの人は左が「キキ」、右が「ブーバ」だと感じます。(*3)
それは「目で見た形」(視覚)と、「発音する口の感覚」(体性感覚)や「耳で聴いた音」(聴覚)に、感覚的な共通性があるからだといわれます。
「キキ」の鋭く尖った感覚は左の図形、「ブーバ」の柔らかく鈍い感覚は右の図形にふさわしく感じられるのです。
「視覚」「聴覚」「味覚」「嗅覚」「体性感覚」など、異なる感覚からのイメージが入り交じる現象を「クロス・モダリティ」(cross modality、五感の相互作用)といいます。
「気が重い」「心が痛い」「明るい気持ち」といった表現を感覚的に理解できるのも、クロス・モダリティによるものでしょう。
*1 Harvard Business Review「脳は味覚より視覚の情報を優先する 「クロスモダリティ効果」とは何か」2016年 1 月 29 日、https://www.dhbr.net/articles/-/3911
*2 ジョン・ブロックマン編、長谷川眞理子訳『知のトップランナー 149 人の美しいセオリー』(青土社、2014 年)、「レモンは速い」バリー・C・スミス、pp.238-241
*3 Ramachandran,V. S. and E. M. Hubbard, "Synaesthesia ― A Window Into Perception, Thought and Language," Journal of Consciousness Studies, 8-12, 2001, pp.3-34
⇒ ブログの概要(トップ・ページ)はこちら。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「宣伝会議」さまの実践講座に登壇しました。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆ 「読者が選ぶビジネス書グランプリ2022」にノミネートされました。
◆ ライザップの瀬戸健社長が、『週刊文春』で書評をお書きくださいました(2021年10月28日号、p.121)。
単行本、聴く本(オーディオブック、Audible)、電子書籍(Kindle、Kobo、Kinoppy、honto、Doly)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「マーケティング」【内容紹介】
◆ 「二子玉川 蔦屋家電」さまで、マーケティングの月間ランキング1位になりました(2022年5月、6月、9月)。
◆ 『日刊工業新聞』さまに書評が掲載されました(2022年2月7日)。
単行本、聴く本(オーディオブック、Audible)、電子書籍(Kindle、Kobo、Kinoppy、honto、Doly)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「意思決定」【内容紹介】
◆ 『PRESIDENT』2023年2.17号の「職場の心理学」のコーナーで、「絶対に失敗が許されない人の「意思決定力」養成法」と題した著者の記事が掲載されました(p.106-109)。
単行本、聴く本(オーディオブック、Audible)、電子書籍(Kindle、Kobo、Kinoppy、honto、Doly)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆