(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

経営学の紹介 & Coffee Break(写真、紀行、音楽など)

「ブランド・イメージ」の魔法(3)レモンは速い?

知らず知らずのうちに、私たちはさまざまなイメージに影響されます。

有名な例を紹介しましょう。

後半で解説をするので、まずは質問にお答えください。

 

<質問1>

おかしな質問ですが、「レモンは速いか、遅いか?」と聞かれたら、あなたの直感ではどちらでしょう?

 

<質問2>

下の図形には、それぞれ名前がついています。

ひとつは「ブーバ」(bouba)、もうひとつは「キキ」(kiki)です。

あなたの直感では、どちらの名前が、どちらの図形のものでしょう?

 

解説へ行く前に、イメージにまつわる別の例を。

白ワインに赤ワインのような色をつけると、目から入る情報に惑わされて、味も赤ワインのように感じるという研究があります。

また、実際にはまったく同じワインを、値段が違うように見せかけて飲ませると、「値段の高い」ワインのほうがおいしく感じられるという実験もあります。(*1)

 

さて、冒頭の質問に戻りましょう。

 

<質問1>では、多くの人は「速い」と答えます。(*2)

理由ははっきりしませんが、「瞬時に広がる鮮烈な酸っぱさ」(味覚)、「薄い黄色」「ラグビー・ボールのような形」(視覚)、「爽やかな香り」(嗅覚)などから連想される総合的なイメージが、「速い」と感じられるのでしょう。

 

<質問2>では、ほとんどの人は左が「キキ」、右が「ブーバ」だと感じます。(*3)

それは「目で見た形」(視覚)と、「発音する口の感覚」(体性感覚)や「耳で聴いた音」(聴覚)に、感覚的な共通性があるからだといわれます。

「キキ」の鋭く尖った感覚は左の図形、「ブーバ」の柔らかく鈍い感覚は右の図形にふさわしく感じられるのです。

 

「視覚」「聴覚」「味覚」「嗅覚」「体性感覚」など、異なる感覚からのイメージが入り交じる現象を「クロス・モダリティ」(cross modality、五感の相互作用)といいます。

「気が重い」「心が痛い」「明るい気持ち」といった表現を感覚的に理解できるのも、クロス・モダリティによるものでしょう。

 

*1  Harvard Business Review「脳は味覚より視覚の情報を優先する 「クロスモダリティ効果」とは何か」2016年 1 月 29 日、https://www.dhbr.net/articles/-/3911

 

*2  ジョン・ブロックマン編、長谷川眞理子訳『知のトップランナー 149 人の美しいセオリー』(青土社、2014 年)、「レモンは速い」バリー・C・スミス、pp.238-241

 

*3  Ramachandran,V. S. and E. M. Hubbard, "Synaesthesia ― A Window Into Perception, Thought and Language," Journal of Consciousness Studies, 8-12, 2001, pp.3-34

 

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