今回は著書の第10章から、10-11の内容を紹介します。
幅広い視野をひらくために、若いみなさんにおすすめしたいのは、海外を旅することです(残念ながら執筆時点では「新型コロナ」の影響で、海外旅行は難しくなっています)。
「日本の常識は世界の非常識」といわれることがあります。日本式と外国式のどちらが正しいとは一概にいえませんが、いろいろな発想や考え方を知って、視野を広げるのは有益でしょう。
たとえば、日本の鉄道には改札があります。全員をしっかりチェックして、切符を持たずに列車に乗る人が1人も出ないようにと考えます。しかしヨーロッパの多くの国では、鉄道に改札はありません。その気になれば、切符を持たずに列車に乗ることもできます。
その代わり、ときどき乗り込んでくる検査官が切符をチェックして、不正があれば高額の罰金をとります[i]。不正が見つかる確率と、罰金の金額が適切なら、無賃乗車を一定の割合に抑えることができます。改札機を設置するよりも費用対効果が大きいということもありえます。
イギリスやフランスをレンタカーで走ったことがありますが、ヨーロッパでは都市部を除くと信号はあまりなく、地方では「ラウンドアバウト」(roundabout、ロータリー)と呼ばれる円形の交差点がほとんどでした。日本人は信号できっちり制御する方が安心かもしれませんが、交通量の少ない道では、ラウンドアバウトの方が待ち時間が少なく効率的でしょう。
他にも、海外で日本の常識が通用しないことはいろいろとありました。
ロンドンで予約したホテルへ着くと、まだ午後でしたが入り口の鍵が閉まっていました。呆然としていると、通りがかりの人が「ホテルへ電話してみたら?」と教えてくれました。イギリス人は親切で、何か困っていると、すぐに誰かが声をかけてくれました。日本では思いもよらないことですが、鍵は隣の店に預けられていました。
フランスのニースでレンタカーを借りるとき、安全な日本の感覚で「鍵は車の中?」と聞いたら、「Impossible!」(ありえない)と一蹴されたこともありました。
オーストリアのハルシュタットへ向かう途中、工事のために列車が止まっていたことがありました。目的地へたどり着くための情報やアドバイスがないかと思って、泊まる予定の宿へメールを送ってみました。
その返信は、「私たちはあなたの旅行について、何のアドバイスも時刻表も提供できません。鉄道会社へお尋ねください」という素っ気ないものでした。
日本人の感覚からすると、もう少し親身に対応してくれてもいいように思いましたが、正論には違いありません。たまたまかもしれませんが、オーストリアでは、官僚的で融通のきかない対応をよく経験しました。
そうしたことは単に「サービスが悪い」と片づけられるものでもなく、文化や考え方の違いなのでしょう。慣れれば当たり前になって、とくに不快には感じなくなりました。
日本のサービスは、丁寧で親切なことが多いと思います。しかし、そのために価格が高くなったり、従業員に低賃金の長時間労働を強いたり、ということもあるのでしょう。
ここで紹介したのはほんの一例ですが、海外を旅すると、日本では当たり前だと思っていたことについて、考えさせられることがたびたびあります。
最初はパック・ツアーでもよいと思いますが、できれば宿や飛行機の予約から、現地の交通機関まで、すべてを自分で考えて旅をするといいでしょう。そうすれば、計画と実行、不測の事態への対処といった能力も自然と鍛えられるでしょう。
ただし、現地の情報をよく調べて、安全には十分お気をつけください。
[i] 東洋経済ONLINE「鉄道キセル対策、日本と欧州はこんなに違う 私服検査官が一斉検挙、罰金は運賃の数十倍」2017年6月30日、https://toyokeizai.net/articles/-/178167
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