(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

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「老後2000万円問題」にどう備える?(2)投資とギャンブルはどう違う?

*投資について、ここでは私の考えを書いているだけで、読者におすすめするつもりはありません。投資の結果については責任をもてませんので、される方は、ご自身の判断と責任でお願いいたします。

 

投資(investment)の話をする前に、「ギャンブル」(gamble、賭けごと)との違いを考えておきましょう。

趣味や気晴らしでほどほどに楽しむのはよいかもしれませんが、お金を増やす目的でギャンブルをやるのは合理的でしょうか。

長期で利益を得るには、収支の期待値(expected value、確率的な平均値)がプラスでなければなりません。

しかしギャンブルでは、この期待値がふつうはマイナスです。

 

ギャンブルには、運営費がかかります。

たとえば、1日の売上(=お客が払うお金)が1000万円のパチンコ店があるとします。

お店の運営費および利益として、お店が200万円を差し引き、残りの800万円をお客に還元するとします。

そうすると平均では、お客へは払ったお金の80%(800万円/1000万円)しか戻らないことになります。

よほどのノウハウをもつ人は別かもしれませんが、この条件ではほとんどの人が長期では負けるはずです。

 

ちなみに、ギャンブルでお客に戻るお金の割合は「還元率」と呼ばれます。

少し古いデータですが、ある本によると「パチンコ、パチスロ」の還元率は60~90%、「競馬、競輪」は74.8%、「日本の宝くじ」は45.7%だそうです。(*1)

ギャンブルでの負けを、英語ではよく「stupidity tax」(「愚かさ」への税金)といいます。

(長期の平均でいえば)最初から負けが決まっているのです。

趣味で楽しむのはよいのですが、お金を増やす目的でギャンブルをやるのは合理的ではないのでしょう。

 

投資は、簡単にいえば「将来の利益のために、お金や時間や努力を投入すること」です。

学びや経験にお金を使い、自分の価値を高めるのも「自分への投資」でしょう。

 

お金を増やしたいのなら、プラスの収支が見込めるところに投資をしなければなりません。

米国などのこれまでの歴史をみると、株式への投資は、収支の期待値がプラスです。

うまくいかずに倒産する会社もありますが、全体の平均でみれば、企業は利益を出し、成長しています。

その成果が株価の上昇や、配当という形で株主に還元されるのです。


4年ほど前の記事ですが、日本経済新聞で、過去30年間の「NYダウ」と「日経平均」の平均リターンが紹介されていました。(*2)

「NYダウ」や「日経平均」は、株式市場の平均的な状況を表すように、多くの会社の株価から計算された「株価指数」です。

この記事の時点では、過去30年間のNYダウの年平均リターンが9.2%、日経平均は1.0%でした。

リターン(利回り)というのは投資額に対する利益額の割合で、銀行預金でいえば「利率」にあたるものです。

NY ダウの利回りが 9.2 %というのは、投資した100万円が、1 年後には109.2万円になるということです。

(将来も過去の統計どおりになるとは限りませんが)収支の期待値がそれなりのプラスですから、(リスクの許容度にもよりますが)私自身は、米国株への投資はやるほうが合理的だと思っています。

なお、日本では現在、株式の配当や売却益に20.315%の税金がかかるほか、売買手数料や、ETF(上場投資信託)なら信託報酬のような経費がかかることには注意が必要です。

 

*1   桜井進著『面白くて眠れなくなる数学 BEST』(PHP 研究所、2014 年)

 

*2   日本経済新聞「上昇力、配当、成長力…米国株の 3 つの魅力」2020 年 4 月 3 日

www.nikkei.com

 

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