2017年までアメリカ大統領だったオバマ(Barack Obama)氏が、2008年の大統領選挙で掲げたキャッチ・フレーズは「Change」(変革)でした。
しかし、実際に組織を変えるのは、かなり難しいようです。
組織がなかなか変われないことを、比喩的に「組織の惰性」(organizational inertia)といいます。
ボウリングの球を投げると、手を離れたボールは惰性(慣性)で、(カーブをかけていなければ)レーンを真っ直ぐに進んでいきます。
軽いピンにぶつかったくらいでは、スピードも方向も、大きくは変わりません。
自動車も、ある程度のスピードで走っていると、「急にハンドルを切っても、曲がりきれない」「ブレーキをかけても、すぐには止まれない」ということがあります。
組織にも、そういうところがあります。
とくに成功を重ねて大きくなった組織では、「環境が変わっても以前のやり方を変えられない」「過去の成功体験から抜け出せない」ということがあります。
たとえば、「価格破壊」をスローガンとして高度成長の時代に躍進し、小売業の売上トップに上りつめた「ダイエー」は、バブル崩壊後は経営不振に陥り、2015年に「イオン」グループの子会社になりました。
セブン&アイホールディングスの元会長で「流通の神様」といわれた鈴木敏文さんは、ダイエーの中内㓛元会長について、次のように語っています。
中内さんは偉大な経営者で、ものが不足していた時代に日本にスーパーマーケットを導入して、いかにものを充足させるか、いかに安く売るかということに専念した。ただ時代がどんどん変わってきたのに、“安さ”から抜けられなかったんでしょうね。(*1)
行動経済学者のセイラー(Richard H. Thaler、2017年にノーベル経済学賞)は「惰性」について、次のように書いています。
損失回避性が私たちの発見を説明する要因の1つであることはまちがいないが、それと関連する現象がある。惰性だ。物理学では、静止している物体は、外部から力を加えられない限り、静止状態を続ける。人もこれと同じように行動する。別のものに切り替える十分な理由がない限り、というよりおそらくは切り替える十分な理由があるにもかかわらず、人はすでに持っているものに固執するのである。経済学者のウィリアム・サミュエルソンとリチャード・ゼックハウザーは、こうしたふるまいに「現状維持バイアス(status quo bias)」という名前をつけている。(*2)
*1 週刊朝日(2014 年 10月10日号)
*2 リチャード・セイラー著、遠藤真美訳『行動経済学の逆襲』(早川書房、2016 年)、pp.223-224
⇒ ブログの概要(トップ・ページ)はこちら。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「宣伝会議」さまの実践講座に登壇しました。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
◆ 「読者が選ぶビジネス書グランプリ2022」にノミネートされました。
◆ ライザップの瀬戸健社長が、『週刊文春』で書評をお書きくださいました(2021年10月28日号、p.121)。
単行本、聴く本(オーディオブック、Audible)、電子書籍(Kindle、Kobo、Kinoppy、honto、Doly)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「マーケティング」【内容紹介】
◆ 「二子玉川 蔦屋家電」さまで、マーケティングの月間ランキング1位になりました(2022年5月、6月、9月)。
◆ 『日刊工業新聞』さまに書評が掲載されました(2022年2月7日)。
単行本、聴く本(オーディオブック、Audible)、電子書籍(Kindle、Kobo、Kinoppy、honto、Doly)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「意思決定」【内容紹介】
◆ 『PRESIDENT』2023年2.17号の「職場の心理学」のコーナーで、「絶対に失敗が許されない人の「意思決定力」養成法」と題した著者の記事が掲載されました(p.106-109)。
単行本、聴く本(オーディオブック、Audible)、電子書籍(Kindle、Kobo、Kinoppy、honto、Doly)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆