(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

経営学の紹介 & Coffee Break(写真、紀行、音楽など)

時は金なり?(1)「機会費用」

私は料理が好きなのですが、その最中に、ふと考え込むことがあります。

たとえばツナ缶を器に空けると、缶の隅にこびりつきが残ります。

そこで、中のツナをどれくらいきれいに取り出すのが合理的か、考えてしまうのです。

 

時間があれば丁寧にこそぎとったり、料理につかう液体の調味料で洗い流すこともあります。

しかし時間がなかったり、火にかけた鍋を気にしていたりすると、1秒くらいツナ缶を振って器に空け(1秒は、たぶん多くの人が思うよりも長い時間です)、さっと缶を洗い、そのまま捨ててしまうこともあります。

 

「それはエコじゃない」と、お叱りの声が聞こえそうです。

しかし(ツナと同じように)私たちの時間も、社会の貴重な資源です。

私たちは時間をつかって、家事や仕事やボランティアなど、何かしら社会に貢献しています。

 

経営学(経済学)には「機会費用」(opportunity cost)という考え方があります。

ツナを節約する時間を別のことにつかえば、それ以上の価値を生むかもしれません。

そういう「より価値の高いことをせずに(その機会を逃して)価値の低いことをしてしまう」費用を「機会費用」と呼ぶのです。

 

ツナ缶が100円で、その1%を節約する価値は1円だとしましょう。

ツナ缶と格闘する時間を、たとえばアルバイトにつかうこともできます。

時給が1200円だとすると、1分では20円(1200円÷60分=20円)、1秒では1/3円(20円÷60秒=1/3円)で、3秒には1円の価値があります。

そうすると、ツナを1%節約するのに3秒以上かけるのは、割に合わないことになります。

時給の高い人なら、時間の価値はもっと大きくなります。

 

何でもお金に換算して考えることに、抵抗感を覚える人もいるでしょう。

しかし(「市場の失敗」のような例外もあるのですが、価格メカニズムがうまく働いているときは)、「ツナ」や「時間」のような資源の社会的な価値は、だいたい価格に反映されます。

価格を基準に考えれば、(自分の利益はもちろん)社会の利益にもかなう判断ができるはずです。

 

そんなことばかり考えていますが、なんとも面倒な職業病です。

 

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