「人は見かけによらない」「外見より中身」といわれます。
そういう警句があるのは、私たちがものごとを見かけで判断しがちな裏返しかもしれません。
「客観的な実態」と「主観的なイメージ」があるとして、そのどちらが重要なの
でしょうか。
「どちらが判断に影響するか」という意味では、答えははっきりしています。
私たちは、あらゆることを自分の心(脳)のなかで決めています。
そして心(脳)のなかにあるのは、「客観的な実態」ではなく「主観的なイメージ」です。
だから、私たちはすべてを「主観的なイメージ」にもとづいて決めます。
そして私たちには、「自分だけの『主観的なイメージ』を『客観的な実態』だと思い込む」という奇妙なクセがあります。
意外に思われるかもしれませんが、このことは脳科学者や心理学者のあいだでは常識でしょう。
もちろん、経験とともに「主観的なイメージ」が「客観的な実態」に近づくということはあるでしょう。
「客観的な実態」と「主観的なイメージ」がどれくらい一致しやすいかは、商品のタイプにもよります。
経営学では「探索財」(search goods)、「経験財」(experience goods)、「信用財」(credence goods)という分け方があります。
「探索財」は、「お客が商品を『探索』するだけで、価値がわかる」商品です。
たとえばパソコンに詳しい人なら、CPUやメモリーやストレージ、OSや付属ソフトといったスペック(specification、仕様)を見れば、かなり正確にその価値がわかるでしょう。
「いいモノを安く」といいますが、価値がわかるのなら、お客はできるだけ価値が高く、値段の安い商品を選ぶでしょう。
探索財では、コスト・パフォーマンス(費用対効果)が重要になるのです。
「経験財」は、「実際に『経験』しなければ、価値がわからない」商品です。
スーパーやコンビニに並ぶお菓子の新商品は、1度は食べてみなければ、どんな味かわかりません。
しかし1度でも食べれば、どれくらいおいしいのか、はっきりと評価することができます。
「映画」「音楽」「本」も経験財で、観たり聴いたり読んだりしなければ、その価値はわかりません。
お客は失敗するのが怖くて、なかなか経験財の購入に踏み切れないでしょう。
だからメーカーやお店は「レビュー」「見本」「試供品」などで商品の情報を提供し、安心して買ってもらう工夫をするのです。
「信用財」は、「経験しても価値がわかりにくく、効果を『信用』するしかない」という商品です。
医療や健康食品、スキンケア商品などが、これにあたるでしょう。
「今日は肌つやがいい」と思っても、それはサプリやスキンケアのおかげなのか、睡眠や食生活、ストレスによるものなのか、あるいは気のせいなのか、はっきりとはわかりません。
医療では「プラシーボ効果」(placebo effect、偽の薬を投与しても症状が改善する効果)として有名ですが、私たちの感覚はイメージにかなり左右されます。
客観的には効果がないはずでも、「効きそう」だと思っていると主観的には効果を感じるのです。
そのため信用財では「ブランド・イメージ」をよくする広告や CM やパッケージに、費用の大きな割合が投じられます。
サービスの場合は、インテリアや照明デザイン、芳香や音楽、接客などの雰囲気づくりも大切でしょう。
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