『和をもって日本となす』(ロバート・ホワイティング著、玉木正之訳、角川書店、1990年)
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この本の終わりのほうで、ホワイティングは次のように書いています。
そういう意味では、過酷ともいえるほどの春季キャンプや試合前の練習にも、それなりの効用がないわけではないのだ。たとえチームの成績が振るわなくても、練習だけは厳しく一所懸命やりましたと言い訳することができる、というわけである。日本では、結果はさて措き、そのような努力の過程が高く評価される。一方、アメリカ式のやり方を取り入れるということは、選手たちに個人主義的な考え方を植えつけることにほかならない。それは<和>(wa)というものを軸にしている日本の社会構造の根幹を揺すぶりかねない行為ということもできる。選手たちが、自分自身で考え、自分自身のやり方を身につけ、自分自身の考え方を押し通す――そんなことを許せば、遅かれ早かれ、日本の野球界全体の秩序が乱されてしまうかもしれない。いや、野球界のみならず、日本の社会全体に悪影響をおよぼしかねない。それは、日本人が“純粋な”日本人でなくなるということを意味している。つまり、日本人は、滅私奉公という生き方で英雄となった武士(samurai)の子孫ではなくなってしまうのである。(p.495)
「滅私奉公」は、「私(個人)を滅して、公(集団)に奉ずる」ということですから、「個人主義」を否定し、「集団主義」をよしとするものでしょう。
この本に描かれている文化の違いをざっくりまとめると、「アメリカ人は結果主義・自由主義・個人主義」「日本人はプロセス主義、統制主義、集団主義」ということになりそうです。
アメリカ人は「成果は大きく、努力や苦痛は小さく」と考えます。
これはまさに、効率の考え方です。
「費用対効果」(効率、生産性)という世界標準の考え方からいえば、「仕事」や「努力」は費用で、(効果が同じなら)減らすべきものです。
しかし日本人は、「仕事」(残業)や「努力」をたくさんすることが偉いと考え、「手を抜く」「楽をする」ことを軽蔑します。
その結果として「日本では『無駄な仕事』『意味のない仕事』が多くなり、生産性が低くなっている」ということは、はたして言えるのでしょうか、言えないのでしょうか。
次回からは別の文献を通じて、日米の文化の違いを、もう少し掘り下げていこうと思います。
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