『和をもって日本となす』(ロバート・ホワイティング著、玉木正之訳、角川書店、1990年)
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落合博満選手(当時)とともに、野球界の「新人類」として紹介されているのは、ジャイアンツの江川卓投手(当時)です。
ホワイティングは、旧世代と「新人類」の違いについて、次のように書いています。
江川と落合は、1980年代の後半に台頭してきた<新人類>(shin-jinrui = new breed)と呼ばれる新しい世代の先駆者といわれた。“新人類”とは、“義理人情”“自己犠牲”“長幼の序”といった父親の世代の価値観をおおっぴらに拒絶する若者たちのことを指す言葉である。
日本は、かつて敗戦によって荒廃に見舞われたとき、質素と倹約を美徳とする思想を身につけた。が、その後、重工業の信じられないような飛躍的発展によって、驚異的な変身を遂げ、いまや世界第2位のGNP、世界第4位の海軍力、世界一の平均寿命、それに世界で最先端のファッションや建築技術などを誇る大国となった。
そして1980年代の後半には、20代の独身者が世界でもっとも多い国ともなったのである。現在の東京は、高価な服を着た、魅力的で、洗練された若者たちで満ちあふれている。彼らはヴァケーションをハワイやパリで過ごし、彼らの父親たちが質素と倹約のなかで精神主義という人生哲学を持ったのに対して、それとは正反対の物質主義をみずからのライフ・スタイルの中心に据えているのだ。
前の世代の人間たちにとって、自分たちが彼らと血のつながりがあるとはほとんど思うことができないくらい、何もかもが正反対なのである。
前の世代の日本人は、ドブネズミ色の背広を身につけ、黒ぶちのメガネをかけ、床屋で短く切り揃えただけのヘアスタイルで、キリン・ビールの大瓶を飲んでいた。彼らは企業の経営者を崇拝し、会社での昇進しか頭になく、そして武士道精神のような禁欲的な自制心を発揮した。また彼らの大半は、自民党に投票し、女性は家庭を守るべきだと考え、そして巨人軍を熱烈に応援したのだった。
一方の新人類は、ブランドもののファッションや金のネックレスを身につけ、ルイ・ヴィトンの鞄を持ち歩き、髪の毛にはパーマをあて、輸入ものの缶ビールを飲み、デザインのしゃれた電話器を使う。彼らは、会社の上司よりもミュージシャンやコメディアンを崇拝し、<財テク>(zai-tech = money game)が流行語になったように、地道な会社づとめよりも株などの投機に興味を持っている。
また新人類の女性たちは、みずからすすんで男性の職場に入り込み、みずからすすんで男性をデートに誘い出す。処女は流行らなくなり、離婚が流行した。そして女性だけではなく、男性用の化粧品まで現れるようになった。(pp.323-325)
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