(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

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なぜ「八甲田山 死の彷徨」は起きたのか(1)

この週末、「10年に一度」の寒波が襲来すると報じられています。

そのニュースを聞いて、ドラマや映画にもなった新田次郎さんの小説『八甲田山 死の彷徨』新潮文庫、1978年)を思い出しました。

 

日露戦争前の1902年、青森県の2つの歩兵連隊が、八甲田山で雪中行軍をします。

一方の連隊は、全員が生還します。

これに対して、もう一方の連隊は遭難し、約9割が凍死するという惨事になります。


この対照的な結果が、多くの人の関心を呼ぶようです。

「リーダーシップやマネジメントの違いに原因があったのではないか」という観点から、経営学の題材としても、よくとりあげられます。

たとえば経営学者の遠田雄志先生は、「映画『八甲田山』に見るミドルの役割」という文章を書かれています。

 

ただし、新田次郎さんの小説が最初に出版されたのは、事件から約70年後のことです。

もとより遭難した連隊の行動については、わずかな生存者からしか証言が得られませんし、詳細で網羅的な記録はなかったはずです。

2つの連隊の編成人数や行程にも大きな違いがあり、単純な比較はできないでしょう。

実話をベースにしたとはいえ、あくまでも「小説」ですから、登場人物の名前が変えられているほか、作者の想像や脚色も加えられ、史実とは異なる部分もあるようです。

 

それはともかく、新田次郎さんは次のように書いています。

文中の「五聯隊」というのは、遭難したほうの連隊です。

 

    ……だが、全般的な傾向としては、五聯隊指揮官の無能を責めるものは少なく、未曾有の猛吹雪に遭遇したがために起きた止むを得ざる事故であるという論調に変わって行った。事実この時の暴風雪と寒気は記録的なものであった。

    異常寒冷現象は第五聯隊雪中行軍隊が出発した一月二十三日の午後からその兆候を現し始めた。北海道に根を据えた高気圧は頑として移動せず、その勢力は東北地方の北部に及んだ。高気圧の停滞に伴う輻射冷却によって急速な気温低下が起り、二十五日には北海道旭川においては零下四十一度という、日本における最低気温の記録を出した。この最低気温の記録は現在に於ても依然として破られずにいる。当時、北海道から東北地方北部にかけての酷寒気団がいかに優勢なものであるかを窺知することができる。雪中行軍隊は、たまたまこの頃近くを通過した低気圧による暴風雪とその後に襲ってきた寒気団に打ちのめされたのであった。
(前掲『八甲田山 死の彷徨』「終章」p.289-290)

 

「死の彷徨」は、おそらく「100年に一度」か、それ以上の寒波のなかで起きたのです。

(次回へ続く)

 

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