新著『今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「意思決定」』の内容紹介。
みなさんがつかっているPCのキーボードは、おそらく左上に「Q」のキーがあり、そこから右へ「QWERTY……」と並んでいるでしょう。
この「QWERTY」(「クワーティ」と発音します)はタイプライターの時代にできたもので、実は入力が遅くなるよう、打ちにくい配置になっています。昔のタイプライターは、速く打つと故障したからです。
PCの時代になり、速く打てるキーボードも開発されました。しかし、いったん普及した「QWERTY」は、今も不動の地位を誇ります。それは、なぜでしょうか。
普及した「QWERTY」でタイピングを覚えれば、学校でも、職場でも、慣れ親しんだキー配置で入力できるので、便利です。自分だけが特殊な配列で覚えると、どこへ行っても、不慣れなキーボードに悪戦苦闘するでしょう。
「どこにでもある」ということが、「QWERTY」の価値を高めているのです。後発のキーボードは、その牙城を崩せませんでした。
このように「利用者が多いほど、利便性が向上する」ことを「ネットワーク効果」(network effect)といいます(*1)。
また、「いったん優位に立った先行者は、後発者に逆転されにくい」ことを「先行者優位」(first-mover advantages)といいます。
後発者が「QWERTY」を逆転できない背景には「スイッチング・コスト」(switching cost、乗り換え費用)もあります。
キーボードに慣れるには、かなりの時間や努力が必要です。初めてタイピングを覚えるとき、ほとんどの人の手元には「QWERTY」があるはずです。そして、いったん「QWERTY」を覚えると、「タイピングがもっと速くなる」と言われても、なかなか別のキーボードに乗り換える気にはならないでしょう。新しいキーボードの購入費に加えて、新たなタイピングに慣れるまでの時間やストレスが大きいからです。
そうした「スイッチング・コスト」によって、人々は「QWERTY」に「ロック・イン」(lock-in、閉じ込められる、ほかの商品に乗り換えられない)されるのです。
「現状維持バイアス」(3-4)も、乗り換えを抑制するでしょう。
このように、ものごとのつながり(波及効果)を考えることで、さまざまな現象のメカニズムを解き明かすことができます。
「 Twitter」のような有名アプリが、ますます人気になるのも、ネットワーク効果によるものでしょう。
アプリをつかう人が多いほど、「多くの人とコミュニケーションできる」「面白い(有益な)投稿をみられる」など、アプリの魅力も増します。
機能が優れていても、参加者が少なければ、コミュニケーション・ツールとしての価値は低いでしょう。
*1 カール・シャピロ、ハル・R. バリアン著、千本倖生監訳、宮本喜一訳『「ネットワーク経済」の法則』(IDGコミュニケーションズ、1999 年)
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今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「意思決定」【内容紹介】
◆ 『PRESIDENT』2023年2.17号の「職場の心理学」のコーナーで、「絶対に失敗が許されない人の「意思決定力」養成法」と題した著者の記事が掲載されました(p.106-109)。
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