新著『今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「意思決定」』の内容紹介。
今回は、「初期設定の効果」と「ナッジ 」のお話です。
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ひとつ、クイズにお答えください。
下の図は、ヨーロッパのさまざまな国での「(自分が亡くなった後の)臓器提供に同意する割合」のグラフです。
左の4カ国では同意する割合が低く、右の7カ国では高いことがわかります。
この差はどうして生まれたのでしょうか?
答えを考えてから、その先をお読みください。
臓器提供に同意する割合(%)
Johnson, Eric J. and Daniel Goldstein, "Do Defaults Save Lives?," Science, 302-5649, 2003, pp.1338-1339
実は、同意率の低い国の調査用紙は「同意する方は、チェックマークをつけてください」となっています。
同意率の高い国では「同意しない方は、チェックマークをつけてください」となっています。
調査用紙の「初期設定」が、これほど大きな違いを生むのです。
これを「初期設定の効果」(default effect、初期値効果、デフォルト効果)といいます。
その原因のひとつは、現状(初期設定)を変えることに抵抗感をもつ「現状維持バイアス」(3-4)でしょう。
あるいは「初期値がふつうなのだろう」と思って、これに「同調」(4-5)するのかもしれません。
考えるのが面倒で、初期設定のまま放置するということもあるのでしょう。
自分で決めているようで、実はまわりの状況に影響されていることは、意外に多いのかもしれません。
行動経済学者のアリエリー(Dan Ariely)による解説が「TED」にありますので、ぜひご覧ください。
「ちょっとした工夫で、人々を望ましい行動に導く」ことを「ナッジ」(nudge、ひじでつつく)といいます。
有名なのは、男性トイレの小便器に描かれるハエの絵です。
私もスキポール(オランダ)やチャンギ(シンガポール)といった国際空港のトイレで、実物を見ました。
便器にハエが描かれていると、男性はそこを「狙う」という習性があります。
ちょうどよい場所にハエを描くと、莫大な清掃費を節約できるそうです。*
*リチャード・セイラー著、遠藤真美訳『行動経済学の逆襲』(早川書房、2016年)、第 32 章「予測可能なエラーを減らす」
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