新著『今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「マーケティング」』、内容紹介の5回目です。
今回は「ブーバ・キキ効果」と「クロス・モダリティ」のお話です。
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そもそも、マーケティングでいう「商品」とは何でしょうか。
商品(サービス)の「客観的な実態」ということもあるでしょう。
しかし、人々が買うかどうかは、商品の「主観的なイメージ」で決まります。
「ブーバ・キキ効果」と「クロス・モダリティ」
人々は自分でも気づかないうちに、五感から入るさまざまな刺激に影響されます。
有名な実験を紹介しましょう。
図10のような2つの図形があります。ひとつには「ブーバ」(bouba)、もうひとつには「キキ」(kiki)という名前がついています。
それぞれの名前がどちらの図形のものなのか、直感で答えてください。
ほとんどの人は、左が「キキ」、右が「ブーバ」だと感じます。
これは「目で見た形(視覚)」と、「発音する口の感覚(体性感覚)」や「耳で聴いた音(聴覚)」との感覚的な類似性によるものだといわれます。
「キキ」の鋭く尖った感覚は左の図形、「ブーバ」の柔らかく鈍い感覚は右の図形にふさわしく感じられるのです。(*1)
また、「レモンは速いか遅いか?」という質問に直感で答えてもらうと、多くの人は「速い」と答えます(*2)。
おそらく「瞬時に広がる鮮烈な酸っぱさ」(味覚)、「薄い黄色」「ラグビー・ボールのような形」(視覚)、「爽やかな香り」(嗅覚)などから連想されるイメージが総合されて、感覚的に「速い」と感じられるのでしょう。
さ ま ざ ま な 感 覚 の 相 互 作 用 は「ク ロ ス・ モ ダ リ テ ィ」( c r o s s modality、感覚の交差)や「共感覚」(synaesthesia)と呼ばれます。
「気が重い」「心が痛い」「まぶしい笑顔」といった表現が感覚的に通じるのも、クロス・モダリティによるものでしょう。
商品でも、デザイン(視覚)やネーミング(聴覚)といったさまざまな要素が総合されて、ブランド・イメージになります。
(*1) Ramachandran, V. S. and E. M. Hubbard, "Synaesthesia ― A Window Into Perception, Thought and Language," Journal of Consciousness Studies, 8-12, 2001, pp.3-34、http://chip.ucsd.edu/pdf/Synaesthesia%20-%20JCS.pdf
(*2) Woods, Andy T., Charles Spence, Natalie Butcher and Ophelia Deroy, "Fast lemons and sour boulders: Testing crossmodal correspondences using an internet-based testing methodology," i-Perception, 4, 2013, pp.365-379
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