(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

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「6種類」と「24種類」のジャム、どちらが売れる?:わかりやすさ、決定麻痺

新著『今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「マーケティング」』、内容紹介の3回目です。

今回は「わかりやすさ」と「決定麻痺」のお話です。

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     「慣れ親しみ」は「わかりやすさ」にもつながります。
    「わかりやすさ」は、「脳にとって情報処理が簡単」「早く楽に理解できる」「スーッと頭に入る」ということです。
    心理学では「認知容易性」(cognitive ease)や「流暢性」(cognitive fluency)といいます。
    「わかりやすい」ということは、私たちのかぎられた認知資源(思考力)を効率的につかえるということです。
    だから私たちは「難しさ」を嫌い、「わかりやすさ」を好むのです。


ジャムの実験でわかったこと
    マーケティングでも「わかりやすさ」は重要です。
    社会心理学者のアイエンガー(Sheena S. Iyengar)は、「6種類」または「24種類」のジャムを店頭に置いて、どちらがたくさん売れるのか実験をしました。
    集客では「24種類」が「6種類」の1.5倍のお客を呼びました。多くの種類を置くほうが、注目を集める効果はあるようです。

    ところが、購入率では「6種類」が「24種類」の10倍も売れて、圧倒的な差がつきました。(*1)


面倒だと、決められない
    人々はかぎられた時間のなかで、多くのことを決めなければなりません。
    選択肢が多すぎると決めるのが難しくなり、面倒になって考えるのをやめてしまいます。
    これは「決定麻痺」(decision paralysis)と呼ばれる現象です。
    みなさんにも、そういう経験があるのではないでしょうか。
    購入をうながすには「わかりやすさ」も大切なのです。

 

    テレビ通販でおなじみの「ジャパネットたかた」では、ターゲットの中高年齢層にとって、わかりやすい表現をするよう心がけています。
    たとえば「ピント」は「距離合わせ」、「ダビング」は「移し変え」、「再生」は「録画した映像を見る」と言い換えています。
    横文字や専門用語を避けて、お客に伝わる表現にこだわっているのです。
    そうした「わかりやすさ」が、好感や売上につながっているのでしょう。(*2)

 

(*1)シーナ・アイエンガー著、櫻井祐子訳『選択の科学 コロンビア大学ビジネススクール特別講義』(文春文庫、2014 年)、pp.269-275

(*2)TBS「がっちりマンデー!!」2005 年 5 月 29 日、https://www.tbs.co.jp/gacchiri/archives/2005/0529.html 

 

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