(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

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「ゼロ・サム・ゲーム」を やめて棲み分ける: ポジショニング、ニッチ

1/21(金)に、新著『今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「マーケティング」』が発売になります。

9回にわたって、内容の一部を紹介していきます。

今回は「ポジショニング」と「ニッチ」についてのお話です。

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    「STP」のP、「ポジショニング」(ライバル商品のなかでの位置づけ)について考えましょう。
    マーケティングではとくに「イメージ」によるポジショニングが重視されますが(*1)、それについては6-4でお話しします。
    ここでは、もう少し広い意味でのポジショニングについて説明します。


「ニッチ」を探して、棲み分ける
    ポジショニングは、強力なライバルとの直接対決を避け、自分が強みを発揮できる「ニッチ」(niche)を探して、「棲み分け」(habitat segregation)をはかるということです。
    ニッチは生態学の用語で、生物の生存領域(生存条件)のことです。生物は、さまざまな時間・空間・状況に棲み分けています。
    「砂漠のサボテン」「地中のモグラ」「海の魚」「空の鳥」など、生物たちは自分が強者になれるニッチのなかで生きています。「昼行性」と「夜行性」のように、活動の時間帯で棲み分けることもあります。


ゼロ・サム・ゲーム」を避ける
    ビジネスでも、ライバルと同じやり方で同じ資源(お客)を奪い合うのは「ゼロ・サム・ゲーム」(zero-sum game)の熾烈な競争になります。
    「ゼロ・サム」というのは、誰かのプラスと誰かのマイナスの合計(sum)がゼロになることです。自分がプラスを得るには、そのぶん誰かをマイナスにしなければならないのです。
    たとえば地球上の土地が一定なのに、領土の奪い合いをすれば、これはゼロ・サム・ゲームです。ある国が領土を増やせば、他国の領土がそのぶん減ります。
    誰かに損失を負わせなければ利益を得ることができないので、ゼロ・サムの争いは激しいものになります。できれば、そういう戦いは避けたいものです。
    自分の強みを発揮することができて、ライバルは簡単に入ってこられないニッチを見つけ、「棲み分け」「共存」をはかるほうが効率的でしょう。

    ニーズが多様化・個性化するということは、ターゲット(客層)やニッチ(活動領域)も細分化されるということです。
    そして「モノ余り」の時代、多くのニッチには、すでに強力なライバルがひしめいています。
    自分の強みと、ターゲットのニーズが合致すると同時に、強力なライバルのいないポジション(ニッチ)を探さなければ、生き残るのは難しいでしょう。

 

*1    アル・ライズ、ジャック・トラウト著、フィリップ・コトラー序文、川上純子訳『ポジショニング戦略[新版]』(海と月社、2008 年)

 

 

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