『和をもって日本となす』(ロバート・ホワイティング著、玉木正之訳、角川書店、1990年)
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「一」章は、ボブ・ホーナーの次の言葉ではじまります。
ホーナーは、当時のメジャー・リーグのオールスター選手でした。
ヤクルト・スワローズと契約して、1987年に29歳で来日したのです。
日本流のやり方がいいのか悪いのか、わたしにはわからない。
ただわたしにいえることは、それがわたしの理解を超えているということである。(p.23)
日本の野球界の様子は、次のように紹介されています。
・・・野球選手の生活は、球団の規則によって、がんじがらめに縛られている。その環境は、多くのアメリカ人選手が、軍隊生活と同じか、それよりもっと悪いとすら思っているものなのだ。(pp.28-29)
日本の組織文化、企業文化については、次のように描かれています。
・・・日本人は、「勤勉」と「品質管理」という考え方を長年にわたって培い続け、それによって成功した。が、よくよく考えるなら、その長所も度を越していると思われる面がある。「勤勉」と「品質管理」を、どの程度で妥協していいのかがわかっていないようにも思われるのだ。それは、職場においても野球場においても、同じことがいえる。
日本の野球は、練習量の多いことやサイン・プレイの多いことなど、やりすぎと思われる部分が少なくない。それと同時に、サインや監督の命令など、様々な制約によってがんじがらめに縛られている。つまり、「勤勉」は「熱意過剰」となり、「品質管理」は「自縄自縛」となって、ゲームをプレイする楽しみというものを失くしてしまっているのだ。そのような物事との関わり方は、トヨタの自動車工場で 製造ラインの前に立っているひとも、グラウンドのうえに立っているひとも、まったくかわるところがない。日本の野球選手は、1日に10時間近くも野球場にいる。ある選手は、そのことを指して「プレイ・ボールではなく、ワーク・ボールだ」といった。ホーナーは、この「ワーク・ボール」という言葉を、日本の野球の本質を説明するうえでもっとも適切な表現だと思った。アメリカ人はボールで遊び、日本人はボールで仕事をするのだ。
また日本人は、集団としてまとまると、陽気な空気やくつろいだ雰囲気を失ってしまう性向があるように思われる。集団としての彼らは、辛抱強く建て前を押し通し、規律正しく、理知的で、信じられないくらい堅苦しく振舞う(もっとも、それは酒を飲んでいないときにかぎった話ではあるが)。その様子は、まるで軍隊の規律にしたがっているように見える。ビジネスマンのみならず、幼稚園児のなかにも精神安定剤を必要とするケースがある――などというニュースを耳にするのは、おそらく世界広しといえども、日本だけの現象といえるだろう。(pp.49-50)
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