(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

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「FIRE」ってなに?: 投資の期待リターン

    最近、「FIRE」という言葉をよく耳にします。

    「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとったもので、「経済的に自立して、早くリタイアしよう」というものです。

    簡単にいえば、「早くお金を貯めて、好きなことをする自由を手に入れよう」ということでしょう。

    これに関連する話を、著書の10-1~10-3で書きました。

 

    10-1では、「お金を増やすには、損益の期待値(期待リターン)がプラスのところへ投資しなければならない」という話を書きました。

    一般的なギャンブルでは、参加者が払ったお金が、勝った人へ分配されるようなしくみです。

    しかし、分配される前に、ギャンブルの運営費用や、主催者に入る利益などが差し引かれます。

    参加者へ戻るお金はその分だけ少なくなり、期待リターンはマイナスになります。

    ギャンブルの参加者に戻ってくるお金の割合を「還元率」といいます。

    『面白くて眠れなくなる数学』[1]という本では、「パチンコ、パチスロ」の還元率が60~90%、「競馬、競輪」が74.8%、「日本の宝くじ」は45.7%だと書かれています。

    宝くじを買った瞬間に、(平均でいえば)払ったお金の半分以上を損しているということです。

    確率的な平均でいえば、ギャンブルはお金を減らすばかりです。

 

    10-2では、米国の19世紀初めから21世紀初めの200年以上のデータから、さまざまな金融商品の長期的な運用成績を紹介しました。

 

実質資産価値の推移(米国)

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ジェレミー・シーゲル著、林康史・藤野隆太監訳、石川由美子・鍋井里依・宮川修子訳『株式投資 第4版』(日経BP、2009年)、p.10

 

    図のように、約200年間の運用で、株式は約76万倍の価値になるとされます。

    長期債は約1000倍、短期債は約300倍です。

    このデータからいえば、主な金融商品で、長期的にプラスのリターンが期待できるのは、株式か債権ということになります。

    とくに、株式投資の長期的な運用成績は群を抜いています(もちろん、短期的な変動はあります)。

 

    10-3では、フランスの経済学者ピケティ(Thomas Piketty)が『21世紀の資本[2]で主張した、「巨額の資産を投資する富裕層と、働いて収入を得る人々との経済格差は、ますます開いていく」という話を紹介しました。

    また、「賢人」と呼ばれる投資家のバフェット(Warren E. Buffett)さんが、2013年の「株主への手紙」で、「資金の90%を、S&P 500に連動する低コストのインデックス・ファンドへ投資する」ことを推奨している[3]という話も紹介しました。

 

    投資に対する考え方は、人それぞれです。

    よく勉強されて、ご自身の責任で行うのがよろしいでしょう。

    科学的根拠がないように思える投資理論も、世の中にはあふれています。

    もし1冊だけ読むとしたら、経済学者のマルキール(Burton G. Malkiel)が書いた『ウォール街のランダム・ウォーカー』[4]という本をおすすめします。

 

[1] 桜井進『面白くて眠れなくなる数学 BEST』(PHP研究所、2014年)

[2] トマ・ピケティ著、山形浩生・守岡桜・森本正史訳『21世紀の資本』(みすず書房、2014年)

[3] BERKSHIRE HATHAWAY INC.「SHAREHOLDER LETTERS」2013、p.20、https://www.berkshirehathaway.com/letters/2013ltr.pdf

[4] バートン・マルキール著、井手正介訳『ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理 原著第11版』(日本経済新聞出版、2016年)

 

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