(経営学者)佐藤 耕紀 のブログ

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日本の管理職は、中国やタイと比べても収入が低い?

    今回も、著書のボツネタから。

    日本の働き方について書いた部分ですが、ちょっと話が細かくなりすぎたような気がして、最終的には削りました。

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    パーソル総合研究所は2019年に、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)14カ国の就業意識を調査しました[1]

    この調査では、日本人の仕事への満足度が低いことが示されました。「会社全体」に満足している人は52.3%、「職場の人間関係」は55.7%、「直属の上司」は50.4%、「仕事内容」は58.2%で、これらはすべて、14カ国のなかで最下位でした。

    今の勤務先で働き続けたいという人の割合も、日本は52.4%で、最下位でした。それにもかかわらず、転職への意向は25.1%で、こちらも最下位でした。

    この背景には、雇用流動性の低さ(転職のしにくさ)があるのかもしれません。

    日本以外の13カ国では、転職で年収が増える人が6割以上なのに対して、日本では43.2%と、これも最下位になっています。仕事が嫌なのに転職もできない「飼い殺し」のような状況におかれているのかもしれません。

    また、日本で「管理職になりたい」人の割合は21.4%でした。日本以外の平均(中位数)にあたるマレーシアでは69%ですから、日本人の出世意欲の低さは際立っています。

 

    パーソル研究所は、日本で働く外国人の意識についても調査しました[2]

    日本の会社に対する外国人(正社員)の不満は、上位から順に、①「昇進・昇格が遅い」、②「給料が上がらない」、③「給料が安い」、④「明確なキャリアパスがない」、⑤「無駄な会議が多い」、⑥「残業が多い」、⑦「評価の基準が明確でない」、⑧「組織、上司の意思決定のプロセスがわかりにくい」、⑨「行うべき業務の範囲が明確に定まっていない」、⑩「組織、上司の意思決定が遅い」「技能・スキルが伸びる仕事ができない」、といったものでした。

 

    日本人の出世意欲の乏しさや、外国人の昇給についての不満の背景には何があるのでしょうか。

    2014年の経済紙では、次の図のような調査結果が紹介されました。

 

  • 役職別の年収の国際比較

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日本経済新聞「日本の管理職 年収「割安」 中国・タイを下回る 人材確保に支障も」2014年2月28日、https://www.nikkei.com/article/DGKDASDD2503G_X20C14A2EA2000/

 

    中国やタイの給与水準は、日本よりも低いというイメージがあると思います。たしかに、課長級まではそうです。しかし、日本ではそこから先の昇給がなだらかです。部長級になるころには、中国やタイの管理職に年収で追い越されます。その後はどんどん差が開いていきます。

    日本では、課長級になるまでの待遇は米国なみで、国際的にみても悪くはありません。しかしそこから先は、責任や仕事量に対して、金銭的には報われないのかもしれません。

 

[1] パーソル総合研究所「パーソル総合研究所、日本の「はたらく意識」の特徴を国際比較調査で明らかに」2019年8月27日、https://rc.persol-group.co.jp/news/201908270001.html

[2] パーソル総合研究所「パーソル総合研究所、日本で働く外国人の意識に関する調査結果を発表」2020年2月26日、https://rc.persol-group.co.jp/news/202002260001.html

 

佐藤耕紀

『今さらだけど、ちゃんと知っておきたい「経営学」』

(同文館出版、2021年)税込1870円

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