今回も、著書のボツネタから。
競争戦略の話のまとめとして書いたのですが、紙幅の関係で削ることになりました。
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戦略について、いろいろな話をしてきました。結局は、どこに費用をかけて、どんな効果(価値)を生むかということです。ここでも、費用対効果という考え方が重要になります。
たとえば、(立ち食いだった時代の)「俺のフレンチ」は、食材とシェフには費用をかけて、「おいしい料理」という価値はしっかりと提供しました。
しかし、「広く快適なスペースでゆったり時間を過ごす」という価値は省いて、家賃を削減しました。
丁寧な接客サービスも省いて、フロアスタッフの人件費を節約しました。
こうして空間あたりの席数を増やし、時間あたりの回転率を上げて、規模の経済性(密度の経済性と速度の経済性)による低コストを実現しました。
「おいしい高級フレンチを安く食べられるなら、混雑した中での立ち食いでもいい」という客層にターゲットを絞って、これまでにないニッチ、ブルー・オーシャンを開拓したのです。
「どんな価値を提供するか」「どこに費用をかけるか」「どんな業務をやるか」といった無限の組み合わせから、パズルの答えを探すように、独自のニッチを見つけるわけです。
価値を生まない部分には費用をかけず、大きな価値(効果)を生む部分には費用を惜しまず、メリハリをつけて特徴を出していくということです。
最近、私が面白いと思ったのは、「焼肉ライク」というお店です。「1人で行ける焼肉屋」というコンセプトの、ユニークなお店です。あるテレビ番組では、次のように紹介されていました(情報は放送当時のものです)[1]。
「焼肉ライク」新橋店は、月商が1600万円ほどあるそうです。17席あるカウンターには、1席に1台の無煙ロースターがずらりと設置されていました。
ロースターの前のテーブルには凹みがあって、そこに料理を載せたトレーがぴたりとはまるようになっています。これによってお客ごとのスペースがはっきりして、隣へはみ出すようなことがなくなり、1席あたりの面積を節約できるそうです。箸やお手拭きはカウンター下の引き出しに入っていて、ここでもスペースを節約しています。
基本的なメニューは、ご飯・スープ・キムチの付いた6種類の定食セットだけです。肉はお客が自分で焼くので、お店は皿に盛り付けるだけです。料理の提供時間は平均で3分以内と、牛丼店なみです。
1人で食べてさっと帰るということで、お客の滞在時間は25分くらいだそうです。回転率は1席あたり1日19回転という驚異的なものです。客単価は1350円で、高い回転率と客単価を両立しています。
時代の変化に応じて創意工夫をこらすことで、新しいビジネス・モデルや戦略がどんどん生まれてきます。
[1] TBS「がっちりマンデー」2019年6月9日、https://www.tbs.co.jp/gacchiri/archives/2019/0609.html
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