今回も、著書のボツネタです。
官僚制とシリコン・バレー式のコントラストが鮮明で面白いとは思うのですが、前半がやや理屈っぽいような気もして、最終的には削りました。
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経済学者のブリニョルフソン(Erik Brynjolfsson)らは、IT(情報技術)への投資が効果をあげている企業のマネジメントには共通の特徴があることに気づき、それを「デジタル組織」(digital organization)と名づけました[i]。
デジタル組織の特徴は、①情報へのアクセスとコミュニケーションについてのオープンな方針、②意思決定の分散化と従業員への権限委譲、③業績と強く連動したインセンティブ、④企業文化への積極的な投資、⑤組織全体の戦略目標についての日常的なコミュニケーション、⑥優れた従業員を募集・採用することの重視、⑦(オンライン教育を含む)採用後の教育への精力的な投資、というものでした。
これはシリコン・バレーで多くみられるマネジメントのスタイルとよく一致しています。たとえば、グーグルで人事担当の上級副社長を務めたボック(Laszlo Bock)による『ワーク・ルールズ!』[ii]という本では、グーグルがまさにこのようなマネジメントを実践していることが描かれています。
日米の経営コンサルタントによる『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』という本では、近年のシリコン・バレーの文化や価値観が紹介されています[iii]。
それは、①「適者生存」(Survival of the Fittest)、②「とっととやる」(Get Shit Done!)、③「すばやく動く」(Agility)、④「はやく学ぶ」(Fail Fast)、⑤「完璧を目指すよりまず終わらせろ」(Done is Better than Perfect)、⑥「許可を求めるな、謝罪せよ」(Ask for Forgiveness, not Permission)、⑦「データによる意思決定」(Data-based Decisions)、⑧「宇宙に凹みをつくろう」(Let's Make a Dent in the Universe)、というものです。
創造性とスピードを重視するシリコン・バレーの価値観が伝わってきます。官僚制の対極に位置する考え方といえるでしょう。
[i] Brynjolfsson, Erik, "The IT Productivity Gap," Optimize Magazine, 21, 2003;Brynjolfsson, Erik and Lorin Hitt, “Digital Organization: Preliminary Results from an MIT Study of Internet Organization, Culture and Productivity”, MIT Working Paper, 2002
[ii] ラズロ・ボック著、鬼澤忍・矢羽野薫訳『ワーク・ルールズ! 君の生き方とリーダーシップを変える』(東洋経済新報社、2015年)
[iii] ロッシェル・カップ、到津守男、スティーブ・マギー著『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(クロスメディア・パブリッシング、2017)、第2章
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